痴呆性老人の日常生活自立度判定基準
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都道府県知事
指定都市市長 各殿
厚生省老人保健福祉局長
「痴呆性老人の日常生活自立度判定基準」の活用について
今般、地域や施設等の現場において、痴呆性老人に対する適切な対応がとれるよ
う、医師により痴呆と診断された高齢者の日常生活自立度の程度すなわち介護の必
要度を保健婦、看護婦、社会福祉士、介護福祉士等が客観的にかつ短期間に判定す
ることを目的として、別添「痴呆性老人の日常生活自立度判定基準」を作成したの
で、その趣旨を踏まえ、「障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準」と
併せて広く活用されるよう特段の御配慮をお願いする。
痴呆性老人の日常生活自立度判定基準
1.この判定基準は、地域や施設等の現場において、痴呆性老人に対する適切な対
応がとれるよう、医師により痴呆と診断された高齢者の日常生活自立度を保健
婦、看護婦、社会福祉士、介護福祉士等が客観的かつ短時間に判定することを
目的として作成されたものである。なお、痴呆は進行性の疾患であり、定期的
に判定を行う必要がある。その際、必要に応じ主治医等と連絡を取ること。
2.判定に際しては、意志疎通の程度、見られる症状・行動に着目して、日常生活
の自立の程度を5段階にランク分けすることで評価するものとする。評価に当
たっては、必要により家族等介護にあたっている者からの情報も参考にする。
なお、このランクは痴呆の程度の医学的判定とは必ずしも相関するものではな
い。
3.痴呆性老人の処遇の決定に当たっては、本基準に基づき日常生活自立度を判定
するとともに、併せて「障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)」について
も判定したのち行うこととする。なお、処遇の決定は、判定されたランクによ
って自動的に決まるものではなく、家族の介護力等の在宅基盤によって変動す
るものであることに留意する。
4.痴呆性老人に見られる症状や行動は個人により多様であり、例示した症状等が
すべての患者に見られるわけではない。また、興奮、俳徊、物取られ妄想等は、
例示したランク以外のランクの痴呆性老人にもしばしば見られるものであるこ
とにも留意する。
(ランク I)
判定基準 :何らかの痴呆を有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほ
ぼ自立している。
症状・行動例 :
判定留意事項等:在宅生活が基本であり、一人暮しも可能である。相談、指導
等を実施することにより、症状の改善や進行の阻止を図る。
具体的なサービスの例としては、家族等への指導を含む訪問
指導や健康相談がある。また、本人の友人づくり、生きがい
づくり等心身の活動の機会づくりにも留意する。
(ランク II)
判定基準 :日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さ
が多少見られても、誰かが注意していれば自立できる
症状・行動例 :
判定留意事項等:在宅生活が基本であるが、一人暮らしは困難な場合もあるの
で、訪問指導を実施したり、日中の在宅サービスを利用する
ことにより、在宅生活の支援と症状の改善及び進行の阻止を
図る。
具体的なサービスの例としては、訪問指導による療養方法等
の指導、訪問リハビリテーション、デイケア等を利用したリ
ハビリテーション、毎日通所型をはじめとしたデイサービス
や日常生活支援のためのホームヘルプサービス等がある。
(ランク IIa)
判定基準 :家庭外で上記Uの状態が見られる。
症状・行動例 :なれない場所で道に迷うとか、買物や事務、金銭管理などそ
れまでできたことにミスがめだつ等
(ランク IIb)
判定基準 :家庭内でも上記Uの状態がみられる。
症状・行動例 :服薬管理ができない、電話の応対や訪問客との応対など一人
で留守番ができない等
(ランク III)
判定基準 :日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さ
がときどき見られ、介護を必要とする。
症状・行動例 :
判定留意事項等:日常生活に支障を来すような行動や意志疎通の困難さがラン
クUより重度となり、介護が必要となる状態である。
「ときどき」とはどのくらいの頻度をさすかについては、症
状・行動の種類等により異なるので一概には決められないが、
一時も目が離せない状態ではない。
在宅生活が基本であるが、一人暮らしは困難であるので、訪
問指導や夜間の利用も含めた在宅サービスを利用し、これら
のサービスを組み合わせることによる在宅での対応を図る。
具体的なサービスの例としては、訪問指導、訪問看護、訪問
リハビリテーション、ホームヘルプサービス、デイケア・デ
イサービス、症状・行動が出現する時間帯を考慮したナイト
ケア等を含むショートステイ等の在宅サービスがあり、これ
らのサービスを組み合わせて利用する。
(ランク IIIa)
判定基準 :日中を中心として上記Vの状態が見られる。
症状・行動例 :着替えができない、排便・排尿を失敗する、食事することが
できない
同じことを何度も聞く、やたらに物を口に入れる、物を拾い
集める、排徊、失禁、大声・奇声をあげる、火の不始末、不
潔行為、性的異常行為等
(ランク IIIb)
判定基準 :夜間を中心として上記Vの状態が見られる。
症状・行動例 :ランクVaに同じ
(ランク IV)
判定基準 :日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さ
が頻繁に見られ、常に介護を必要とする。
症状・行動例 :ランクVに同じ
判定留意事項等:常に目を離すことができない状態である。症状・行動はラン
クVと同じであるが、頻度の違いにより区分される。
家族の介護力等の在宅基盤の強弱により在宅サービスを利用
しながら在宅生活を続けるか、または特別養護老人ホーム・
老人保健施設等の施設サービスを利用するかを選択する。施
設サービスを選択する場合には、施設の特徴を踏まえた選択
を行う。
(ランク V)
判定基準 :著しい精神症状や問題行動あるいは重篤な身体疾患が見られ、
専門医療を必要とする。
症状・行動例 :せん妄、妄想、興奮、自傷・他害等の精神症状や精神症状に
起因する問題行為が継続する状態等
判定留意事項等:ランクT〜Wと判定されていた高齢者が、精神病院や痴呆専
門棟を有する老人保健施設等での治療が必要となったり、重
篤な身体疾患が見られ老人病院等での治療が必要な状態であ
る。専門医療機関を受診するよう勧める必要がある。
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