地域保健法


(昭和二十二年九月五日法律第百一号)
平成六年七月一日法律第八四号

第一章 総則

第一条 この法律は、地域保健対策の推進に関する基本指針、保健所の設置そ
    の他地域保健対策の推進に関し基本となる事項を定めることにより、母子
    保健法(昭和四十年法律第百四十一号)その他の地域保健対策に関する法
    律による対策が地域において総合的に推進されることを確保し、もつて地
    域住民の健康の保持及び増進に寄与することを目的とする。

第二条 地域住民の健康の保持及び増進を目的として国及び地方公共団体が講
    ずる施策は、我が国における急速な高齢化の進展、保健医療を取り巻く環
    境の変化等に即応し、地域における公衆衛生の向上及び増進を図るととも
    に、地域住民の多様化し、かつ、高度化する保健、衛生、生活環境等に関
    する需要に適確に対応することができるように、地域の特性及び社会福祉
    等の関連施策との有機的な連携に配慮しつつ、総合的に推進されることを
    基本理念とする。

第三条 市町村(特別区を含む。以下同じ。)は、当該市町村が行う地域保健
    対策が円滑に実施できるように、必要な施設の整備、人材の確保及び資質
    の向上等に努めなければならない。
02 都道府県は、当該都道府県が行う地域保健対策が円滑に実施できるよう
    に、必要な施設の整備、人材の確保及び資質の向上、調査及び研究等に努
    めるとともに、市町村に対し、前項の責務が十分に果たされるように、そ
    の求めに応じ、必要な技術的援助を与えることに努めなければならない。
03 国は、地域保健に関する情報の収集、整理及び活用並びに調査及び研究
    並びに地域保健対策に係る人材の養成及び資質の向上に努めるとともに、
    市町村及び都道府県に対し、前二項の責務が十分に果たされるように必要
    な技術的及び財政的援助を与えることに努めなければならない。

第二章 地域保健対策の推進に関する基本指針

第四条 厚生大臣は、地域保健対策の円滑な実施及び総合的な推進を図るため、
    地域保健対策の推進に関する基本的な指針(以下「基本指針」という。)
    を定めなければならない。
02 基本指針は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 地域保健対策の推進の基本的な方向
二 保健所及び市町村保健センターの整備及び運営に関する基本的事項
三 地域保健対策に係る人材の確保及び資質の向上並びに第二十一条第一項の
    人材確保支援計画の策定に関する基本的事項
四 地域保健に関する調査及び研究に関する基本的事項
五 社会福祉等の関連施策との連携に関する基本的事項
六 その他地域保健対策の推進に関する重要事項
03 厚生大臣は、基本指針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あ
    らかじめ、公衆衛生審議会の意見を聴かなければならない。
04 厚生大臣は、基本指針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、
    これを公表しなければならない。

第三章 保健所

第五条 保健所は、都道府県、政令で定める市又は特別区が、これを設置する。
02 都道府県は、前項の規定により保健所を設置する場合においては、保健
    医療に係る施策と社会福祉に係る施策との有機的な連携を図るため、医療
    法(昭和二十三年法律第二百五号)第三十条の三第二項第一号に規定する
    区域、老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第二十条の九第二項
    に規定する区域及び老人保健法(昭和五十七年法律第八十号)第四十六条
    の十九第二項に規定する区域を参酌して、保健所の所管区域を設定しなけ
    ればならない。

第六条 保健所は、次に掲げる事項につき、企画、調整、指導及びこれらに必
    要な事業を行う。
一 地域保健に関する思想の普及及び向上に関する事項
二 人口動態統計その他地域保健に係る統計に関する事項
三 栄養の改善及び食品衛生に関する事項
四 住宅、水道、下水道、廃棄物の処理、清掃その他の環境の衛生に関する事
    項
五 医事及び薬事に関する事項
六 保健婦及び保健士に関する事項
七 公共医療事業の向上及び増進に関する事項
八 母性及び乳幼児並びに老人の保健に関する事項
九 歯科保健に関する事項
十 精神保健に関する事項
十一 治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病により長期に療養を
    必要とする者の保健に関する事項
十二 エイズ、結核、性病、伝染病その他の疾病の予防に関する事項
十三 衛生上の試験及び検査に関する事項
十四 その他地域住民の健康の保持及び増進に関する事項

第七条 保健所は、前条に定めるもののほか、地域住民の健康の保持及び増進
    を図るため必要があるときは、次に掲げる事業を行うことができる。
一 所管区域に係る地域保健に関する情報を収集し、整理し、及び活用するこ
    と。
二 所管区域に係る地域保健に関する調査及び研究を行うこと。
三 歯科疾患その他厚生大臣の指定する疾病の治療を行うこと。
四 試験及び検査を行い、並びに医師、歯科医師、薬剤師その他の者に試験及
    び検査に関する施設を利用させること。

第八条 都道府県の設置する保健所は、前二条に定めるもののほか、所管区域
    内の市町村の地域保健対策の実施に関し、市町村相互間の連絡調整を行い、
    及び市町村の求めに応じ、技術的助言、市町村職員の研修その他必要な援
    助を行うことができる。

第九条 第五条第一項に規定する地方公共団体の長は、その職権に属する第六
    条各号に掲げる事項に関する事務を保健所長に委任することができる。

第十条 保健所に、政令の定めるところにより、所長その他所要の職員を置く。

第十一条 第五条第一項に規定する地方公共団体は、保健所の所管区域内の地
    域保健及び保健所の運営に関する事項を審議させるため、当該地方公共団
    体の条例で定めるところにより、保健所に、運営協議会を置くことができ
    る。

第十二条 第五条第一項に規定する地方公共団体は、保健所の事業の執行の便
    を図るため、その支所を設けることができる。

第十三条 この法律による保健所でなければ、その名称中に、保健所たること
    を示すような文字を用いてはならない。

第十四条 保健所の施設の利用又は保健所で行う業務については、命令で定め
    る場合を除いては、使用料、手数料又は治療料を徴収してはならない。

第十五条 国は、保健所の施設又は設備に要する経費を支出する地方公共団体
    に対し、政令の定めるところにより、その支出額について、保健所の創設
    費及びこれに伴う初度調弁費については、その二分の一、その他の諸費に
    ついては、その三分の一を負担する。

第十六条 厚生大臣は、政令の定めるところにより、第五条第一項に規定する
    地方公共団体の長に対し、保健所の運営に関し必要な報告を求めることが
    できる。
02 厚生大臣は、第五条第一項に規定する地方公共団体に対し、保健所の設
    置及び運営に関し適切と認める技術的な助言又は勧告をすることができる。

第十七条 この章に定めるもののほか、保健所及び保健所支所の設置、廃止及
    び運営に関して必要な事項は、政令でこれを定める。

第四章 市町村保健センター

第十八条 市町村は、市町村保健センターを設置することができる。
02 市町村保健センターは、住民に対し、健康相談、保健指導及び健康診査
    その他地域保健に関し必要な事業を行うことを目的とする施設とする。

第十九条 国は、予算の範囲内において、市町村に対し、市町村保健センター
    の設置に要する費用の一部を補助することができる。

第二十条 国は、次条第一項の町村が市町村保健センターを整備しようとする
    ときは、その整備が円滑に実施されるように適切な配慮をするものとする。

第五章 地域保健対策に係る人材確保の支援に関する計画

第二十一条 都道府県は、当分の間、基本指針に即して、政令で定めるところ
    により、地域保健対策の実施に当たり特にその人材の確保又は資質の向上
    を支援する必要がある町村について、町村の申出に基づき、地域保健対策
    を円滑に実施するための人材の確保又は資質の向上の支援に関する計画
    (以下「人材確保支援計画」という。)を定めることができる。
02 人材確保支援計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 人材確保支援計画の対象となる町村(以下「特定町村」という。)
二 特定町村の地域保健対策を円滑に実施するための人材の確保又は資質の向
    上の基本的方針に関する事項
三 都道府県が実施する特定町村の地域保健対策を円滑に実施するための人材
    の確保又は資質の向上に資する事業の内容に関する事項
四 その他特定町村の地域保健対策を円滑に実施するための人材の確保又は資
    質の向上に関し都道府県が必要と認める事項
03 都道府県は、人材確保支援計画を定め、又はこれを変更しようとすると
    きは、あらかじめ、特定町村の意見を聴かなければならない。
04 都道府県は、人材確保支援計画を定め、又はこれを変更したときは、遅
    滞なく、厚生大臣にこれを通知しなければならない。

第二十二条 国は、政令で定めるところにより、予算の範囲内において、人材
    確保支援計画に定められた前条第二項第三号の事業を実施する都道府県に
    対し、当該事業に要する費用の一部を補助することができる。
02 国は、前項に規定するもののほか、人材確保支援計画を定めた都道府県
    が、当該人材確保支援計画に定められた事業を実施しようとするときは、
    当該事業が円滑に実施されるように必要な助言、指導その他の援助の実施
    に努めるものとする。

附則

01 この法律施行の期日は、政令でこれを定める。

附則 (昭和二四年五月三一日法律第一六八号) 抄

01 この法律は、公布の日から施行する。

附則 (昭和二八年八月一五日法律第二一三号) 抄

1 この法律は、昭和二十八年九月一日から施行する。
3 この法律施行の際従前の法令の規定により置かれている機関又は職員は、
    それぞれ改正後の相当規定に基いて置かれたものとみなす。

附則 (昭和二九年四月二二日法律第七二号) 抄

(施行期日)
1 この法律は、昭和二十九年七月一日から施行する。

附則 (昭和三八年七月一一日法律第一三三号) 抄

(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一箇月をこえない範囲内において
    政令で定める日から施行し、この法律による改正後の公職選挙法(昭和二
    十五年法律第百号)第四十九条の規定は、この法律の施行の日から起算し
    て三箇月を経過した日後にその期日が公示され、又は告示される選挙から
    適用する。

附則 (昭和四〇年六月三〇日法律第一三九号) 抄

(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。

附則 (昭和四五年一二月二五日法律第一三七号) 抄

(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して九月をこえない範囲内において政
    令で定める日から施行する。

附則 (昭和五七年七月二三日法律第六九号) 抄

(施行期日等)
1 この法律は、公布の日から施行する。

附則 (昭和五九年九月六日法律第七八号) 抄

(施行期日等)
第一条 この法律は、公布の日から施行し、この法律による改正後の保健所法、
    保健所において執行される事業等に伴う経理事務の合理化に関する特別措
    置法(昭和三十九年法律第百五十五号)及び地方財政法(昭和二十三年法
    律第百九号)の規定並びに次条及び附則第四条の規定は、昭和五十九年四
    月一日から適用する。

(経過措置)
第二条 この法律による改正前の保健所法第十条の規定に基づく負担金で、昭
    和五十八年度以前の年度分のものについては、なお従前の例による。

附則 (昭和六〇年七月一二日法律第九〇号) 抄

(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。

附則 (平成三年五月二一日法律第七九号) 抄

(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。

附則 (平成六年六月二九日法律第四九号) 抄

(施行期日)
1 この法律中、第一章の規定及び次項の規定は地方自治法の一部を改正する
    法律(平成六年法律第四十八号)中地方自治法(昭和二十二年法律第六十
    七号)第二編第十二章の改正規定の施行の日から、第二章の規定は地方自
    治法の一部を改正する法律中地方自治法第三編第三章の改正規定の施行の
    日から施行する。

附則 (平成六年七月一日法律第八四号) 抄

(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。

(保健所法の一部改正に伴う経過措置)
第二条 第一条の規定による改正前の保健所法第十一条の規定に基づく保健所
    運営費交付金で、平成五年度以前の年度分のものについては、なお従前の
    例による。

(その他の処分、申請等に係る経過措置)
第十三条 この法律(附則第一条ただし書に規定する規定については、当該規
    定。以下この条及び次条において同じ。)の施行前に改正前のそれぞれの
    法律の規定によりされた許可等の処分その他の行為(以下この条において
    「処分等の行為」という。)又はこの法律の施行の際現に改正前のそれぞ
    れの法律の規定によりされている許可等の申請その他の行為(以下この条
    において「申請等の行為」という。)に対するこの法律の施行の日以後に
    おける改正後のそれぞれの法律の適用については、附則第五条から第十条
    までの規定又は改正後のそれぞれの法律(これに基づく命令を含む。)の
    経過措置に関する規定に定めるものを除き、改正後のそれぞれの法律の相
    当規定によりされた処分等の行為又は申請等の行為とみなす。

(罰則に関する経過措置)
第十四条 この法律の施行前にした行為及びこの法律の附則において従前の例
    によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰
    則の適用については、なお従前の例による。

(その他の経過措置の政令への委任)
第十五条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に伴い必要な経過
    措置は政令で定める。

戻る