医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)
第1章 総 則
(目 的)
第1条 この基準は、医薬品の製造(輸入)承認申請の際に提出すべき資料の
収集のために行われる臨床試験の実施に関する遵守事項を定め、その臨床
試験が倫理的な配慮のもとに、科学的に適正に実施されることを目的とす
る。
(定 義)
第2条 この基準において用いられる主な用語の意義は、次の各号に定めると
ころによる。
(1) 治験
薬事法(昭和35年法律第145号)第14条第3項(同条第4項、第19条の2
第4項及び第23条において準用する場合を含む。)の規定により、医薬品
の製造(輸入)承認(承認事項の一部変更承認を含む。)を申請するに際
し提出すべき資料のうち、臨床試験(健常人を被験者とするものを含む。)
の成績に関する資料の収集を目的とする試験
(2) 医療機関
治験を実施する医療機関
(3) 治験審査委員会
治験実施計画書等の審査を行うため原則として医療機関ごとに設置された
委員会
(4) 治験担当医師
医療機関において治験に関与する医師又は歯科医師
(5) 治験総括医師
同一の治験に一又は複数の医療機関において一又は複数の治験担当医師が
関与する場合は、当該治験を総括する立場にある医師又は歯科医師
(6) 治験薬
治験の対象とされる薬物(医薬品、化学的物質、生物学的物質又はそれら
を含有する製剤)
(7) 治験依頼者
治験の依頼をしようとする者
(8) 対照薬
治験薬と比較する目的で治験に用いられる薬物(医薬品、化学的物質、生
物学的物質又はそれらを含有する製剤、プラセボを含む。)
(9) 被験者
治験薬又は対照薬(以下「治験薬等」という。)の適用の対象となる者
(10)治験薬管理者
医療機関において治験薬等を保管、管理する薬剤師又は医師若しくは歯科
医師
(11)治験実施計画書
治験の実施前に作成された治験の目的、対象、方法等に関する実施計画書
(12)症例記録
治験実施計画に定める記録用紙に記入された被験者ごとの治験経過及び結
果等に関する記録
(13)総括報告書
治験の終了後、治験の目的、方法及び成績等をまとめた治験に関する報告
書
第2章 治験の契約
(治験の契約)
第3条 治験の契約は、治験依頼者と医療機関の間で文書により行うものとす
る。
第3章 医療機関
(医療機関の要件)
第4条 医療機関は、十分な臨床観察及び試験検査を行うことができ、かつ、
緊急時に必要な措置を採ることができるなど、当該治験を適切に実施しう
るものでなければならない。
(治験審査委員会の設置等)
第5条 医療機関の長は、治験の実施について審議等を行うため、治験審査委
員会を設置するものとする。
2 医療機関の長は、治験審査委員会の運営に関する事項及び治験の実施に必
要な事務手続きについて、文書により定めるものとする。
(治験薬管理者の指定)
第6条 医療機関の長は、治験薬等を保管、管理させるため治験薬管理者を置
くものとする。
(医療機関の長の業務)
第7条 医療機関の長は、当該医療機関における治験の実施について次の各号
に定める事項を行うものとする。
(1) 治験の実施について治験審査委員会の意見を求め、その意見に基づいて治
験担当医師に対し治験の実施を了承し、又は必要な指示を与えること。
(2) 治験実施計画書の重大な変更について治験審査委員会の意見を求め、その
意見に基づいて治験担当医師に対し治験実施計画書の重大な変更を了承し、
又は必要な指示を与えること。
(3) 治験担当医師から副作用等に関する報告を受け、当該治験担当医師に対し
指示を行う等必要な措置を講ずること。
(4) 治験終了後、治験担当医師の報告を受け、治験の終了を確認すること。
第4章 治験審査委員会
(治験審査委員会の構成)
第8条 治験審査委員会は、その業務を遂行するに足りる医学、歯学又は薬学
に関する専門知識を有する委員の他、少なくとも1人の医学、歯学又は薬
学の専門家以外の委員、合わせて5人以上で組織する。
2 委員は、医療機関の長が指名するものとする。
3 治験に関与する委員は、治験審査委員会の当該治験に関する審議には参加
しないものとする。
(治験審査委員会の業務)
第9条 治験審査委員会は、その所属する医療機関で実施される治験に関し、
次の各号に定める事項を行うものとする。
(1) 治験実施計画書等により、当該治験を実施することの妥当性について審議
し、医療機関の長に意見を提出すること。
(2) 被験者の治験参加の同意が適切に得られているかを確認する。
(3) 治験実施計画書の重大な変更の妥当性について審議し、医療機関の長に意
見を提出すること。
(4) 治験の進行状況について適宜報告を受け、また必要に応じて、自ら調査を
行い意見を述べること。
(5) 前各号に定める事項に関する記録を作成すること。
(共同の治験審査委員会)
第10条 医療機関が小規模である等の理由により、当該医療機関に治験審査委
員会を設置することが困難である場合には、次のいずれかによることがで
きるものとする。
(1) 治験に参加する複数の医療機関の長の協議により、共同で治験審査委員会
を設置し、当該治験について審議を受けるものとする。
(2) 共同で治験を行う他の医療機関の治験審査委員会により、当該治験につい
て審議を受けるものとする。
2 前項の共同の治験審査委員会は、治験依頼者から独立した第三者性を有す
るものでなければならない。
3 共同の治験審査委員会の構成及び業務については、第8条及び第9条を準
用する。
第5章 治験総括医師及び治験担当医師
(治験総括医師の要件)
第11条 治験総括医師は、治験を総括し、治験担当医師その他治験に参加して
いる研究者に必要な指示を行い得る者であるものとする。
(治験総括医師の業務)
第12条 治験総括医師は、次の各号に定める事項を行うものとする。
(1) 治験薬等の非臨床試験及び先行する治験の結果等に関する資料及び情報に
基づき、治験を実施することの倫理的及び科学的妥当性について検討する
こと。
(2) (1) の結果に基づき、適正な治験実施計画書を作成すること。
(3) 治験が治験実施計画書に従い適切に実施されていることを随時確認するこ
と。
(4) 必要に応じ、治験実施計画書を変更すること。
(5) 治験を総括し、治験担当医師その他治験に参加している研究者に必要な指
示を行うこと。
(6) 治験依頼者から入手した資料及び情報を治験担当医師その他治験に参加し
ている研究者に伝達すること。
(7) 治験実施計画書の作成及び変更並びに治験の実施に当たっては、治験依頼
者と相互に連絡、協議すること。
(8) 治験の終了を確認すること。
(9) 前各号に定める事項に関する記録を作成すること。
(10)治験終了後、治験の総括報告書を作成し、治験依頼者に提出すること。
(11)治験担当医師が作成した症例記録を点検のうえ、治験依頼者に提出するこ
と。
(12)治験の総括報告書、症例記録等に関し、治験依頼者から調査、確認の要請
があったときは、必要な措置を講ずること。
(治験担当医師の要件)
第13条 治験担当医師は、当該治験薬等の有効性、安全性等を適切に評価する
のに必要な専門的知識及び経験を有する者であるものとする。
(治験担当医師の業務)
第14条 治験担当医師は、次の各号に定める事項を行うものとする。
(1) 治験薬等の非臨床試験及び先行する治験の結果等に関する資料及び情報に
基づき治験を実施することの倫理的及び科学的妥当性について検討するこ
と。
(2) 治験の依頼の申出があった場合、所属する医療機関の長の了承を得て治験
を実施すること。
(3) 当該治験薬等の非臨床試験及び先行する治験の結果等必要な情報の入手に
努めること。
(4) 治験実施計画書に従って治験を実施すること。
(5) 医療機関の長の指示を受けること。
(6) 治験の実施中に重篤な副作用が発生した場合には、速やかにその所属する
医療機関の長、治験総括医師及び治験依頼者に文書をもって報告すること。
(7) 症例記録を作成し、個々の被験者の治験の終了後速やかに署名及び捺印し、
治験総括医師に提出すること。
(8) 治験の終了につき、速やかにその所属する医療機関の長に対し報告するこ
と。
2 同一医療機関で複数の治験担当医師が治験に関与している場合には、前項
第2号、第5号、第6号及び第8号の事項については当該医療機関におけ
る治験担当医師の代表者がこれを行うことができる。
第6章 治験依頼者
(治験依頼者の業務)
第15条 治験依頼者は、医療機関への治験の依頼に当たっては、薬事法第80条
の2の治験の取扱いに関する規定を遵守するほか、次の各号に定める事項
を行うものとする。
(1) 治験の依頼に先立ち、予定している治験の内容について次に定める事項に
関して専門的な観点から検討を行い、その結果に基づき当該治験の適否を
判定すること。
イ 非臨床試験及び先行する治験の結果等から、有効性、安全性に関し、当該
治験の目的に応じた十分な情報が得られていること。
ロ イの情報から、治験の実施を依頼するために十分な倫理的及び科学的妥当
性が裏付けられていること。
(2) 治験総括医師を委嘱すること。
(3) 治験の依頼が薬事法第80条の2及び本基準に従い適切に行われていること
を確認するため、自主監査を行う者を指定し、又はその組織を設けること。
(4) 治験中にあっても当該治験に関連する有効性、安全性等に関する新たな情
報を得た場合は、直ちに治験総括医師及び治験担当医師に伝達し、速やか
に必要な措置を講ずること。
(5) 前各号に定める事項に関し、記録を作成すること。
第7章 被験者の人権保護
(被験者の選定)
第16条 治験実施計画書の作成及び被験者の選定に当たっては、人権保護の観
点から、及び治験の目的に応じ、健康状態、症状、年齢、性別、同意能力、
他の治験への参加の有無等を考慮し、治験に参加を求めることの適否につ
いて慎重に検討されなければならない。
(被験者の同意)
第17条 治験担当医師は、治験の実施に関し、治験の内容等を被験者に説明し、
治験への参加について文書又は口頭により、自由意志による同意を得るも
のとする。ただし、口頭による同意を得た場合は、その同意に関する記録
を残すものとする。
2 同意の能力を欠く等により被験者本人の同意を得ることは困難であるが、
当該治験の目的上それらの被験者を対象とした治験を実施することがやむ
を得ない場合には、その法定代理人等被験者に代わって同意を成し得る者
の同意を得るものとする。この場合にあっては、同意に関する記録ととも
に同意者と被験者本人の関係を示す記録を残すものとする。
(被験者に対する説明事項)
第18条 治験担当医師は、同意を得るに当たり治験の目的・段階に応じ次の各
号に定める事項について被験者に説明するものとする。
(1) 治験の目的及び方法
(2) 予期される効果及び危険性
(3) 患者を被験者とする場合には、当該疾患に対する他の治療方法の有無及び
その内容
(4) 被験者が治験への参加に同意しない場合であっても不利益は受けないこと。
(5) 被験者が治験への参加に同意した場合でも随時これを撤回できること。
(6) その他被験者の人権の保護に関し必要な事項
第8章 治験実施計画書
(治験実施計画書)
第19条 治験実施計画書には、治験が安全かつ科学的に実施されるよう治験の
目的・段階に応じ、次の各号に定める事項を記載するものとする。
(1) 治験の目的
(2) 対象、被験者の選択基準、除外基準
(3) 治験薬等のコード名、成分、含有量、剤形等
(4) 投与方法、投与量、投与期間、併用療法
(5) 観察項目、臨床検査項目、観察検査方法
(6) 評価方法及びその基準並びに中止脱落基準、解析方法
(7) 症例記録に関する記録用紙等の様式
(8) 治験の安全性を確保するための事項
(9) 目標とする被験者数及びその根拠
(10)治験の実施期間
(11)治験を実施する医療機関の名称
(12)治験総括医師名、治験担当医師名等
(13)その他必要な事項
第9章 治験薬等の管理
(治験薬等の管理)
第20条 治験薬管理者は、治験薬を適切に保管、管理する。
(治験薬等の管理の記録)
第21条 治験薬管理者は、次の各号に定める記録を作成する。
(1) 治験薬等の受領と使用を示す記録
(2) 未使用の治験薬等を処分又は返却した場合にはその記録
第10章 治験の総括報告書
(治験の総括報告書)
第22条 治験の総括報告書には、治験の目的・段階に応じ、次の各号に定める
事項を記載するものとする。
(1) 治験の目的及び治験の実施期間
(2) 治験依頼者及び治験を実施した医療機関の名称
(3) 治験総括医師名、治験担当医師名等
(4) 治験薬等のコード名、成分、含有量、剤形等
(5) 治験の方法対象、被験者の選択基準、除外基準、投与方法・投与量・投与
期間並びにそれらの設定理由、対照薬を用いた場合にはその選択理由、割
付方法、併用療法、観察項目、臨床検査項目、観察検査方法、評価方法及
びその基準並びに中止脱落基準、解析方法、計画書変更の処理等
(6) 治験の成績
(7) 対象者一覧表
(8) 治験審査委員会の確認が行われた年月日並びに治験審査委員会の委員の氏
名及び職名
(9) 本基準第23条において保存することとされいる記録等保存場所
2 治験の総括報告書には、治験総括医師の署名及び捺印がなされていなけれ
ばならない。
第11章 記録等の保存
(記録等の保存)
第23条 治験実施計画書、症例記録、総括報告書、治験審査委員会に審議に関
する記録及び資料、治験契約書、被験者の同意に関する記録、治験薬等の
管理に関する記録等本基準によって定められる各種の記録、その他症例記
録、総括報告書等の作成の基礎となった測定機器のチャート、写真、治験
薬等の品質試験記録等の生データ類については、保管の責任者を定め、適
切な条件の下に保存されなければならない。
(保存期間)
第24条 前条の記録等のうち治験依頼者が保存するものは、薬事法施行規則で
定める期間とし、その他のものは当該治験に係る医薬品の製造(輸入)承
認時までとする。
第12章 記録等の確認
(記録等の確認)
第25条 医薬品の製造(輸入)承認審査に際し、本基準において保存すること
を求められている記録等について、必要に応じ調査、確認を行う。
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