★DHA
◆DHA(ドコサヘキサエン酸)とは
リノール酸,リノレン酸,アラキドン酸等の高度不飽和脂肪酸と呼ばれるものの一つで
,人体で作る事はできない。最近マグロやカツオ等の背の青い魚に多く含まれる油が[
頭がよくなる物質]として注目される。
◆DHAが頭の栄養といわれる訳
脳には神経細胞があり,互につながりあって神経回路を構成している。脳の神経細胞同
士の接触部をシナプスというが実はここに微妙な隙間がある。そこで情報の橋渡しの役
目をする物質がアセチルコリンである。この物質が分泌されればされるほど情報の伝達
が早くなる,つまり『頭(記憶力・学習力・知識)が良くなる』訳である。DHAはこ
の神経細胞に取込まれやすい性質があり,アセチルコリンの分泌を活発にしていると言
われる。神経回路の働きに大きく関係していることが解明された。
脳には血液脳関門という,脳に通る物質の検問をする,言わば脳の関所のような器官が
ある。DHAは脳に取込まれる事のできる数少ない物質で,例えばやはり青い魚に含ま
れる物質であるEPA(DHAの前駆物質)はここを通ることはできない。
◆DHAの効用
迷路にDHAとパーム油を与えたラットを互に競争させゴールまでの到達時間を計る実
験したところ何度してもDHA群の方が早くゴールに到達する結果を得ている。
このような実験からも記憶・判断能力の効果への期待がされる。
DHAを含む母乳で育った未熟児と含まない粉ミルクで育った未熟児を比較すると、8
年後の知能指数は10ポイント近く差が付いたというデータもある。
◆その他の作用
@制ガン作用(特に乳ガン,大腸ガン,肺ガン)
$^A血中脂質低下作用(コレステロール)
B血圧降下作用
C抗血栓作用(血小板凝集抑制作用)
D抗アレルギー作用
E抗糖尿病作用(血糖値低下)
F網膜反射能向上作用(視力低下抑制)
G抗炎症作用
◆DHAの摂取
DHAを取れば取るほど良いかというと、そうではない。DHAの摂取量には上限が有
り、必要以上にとっても脳の活性化に活かされることはない。だが、問題は『不足する
事による脳機能の低下』である。DHAは人体に欠くことのできない必須脂肪酸である
。ところが現代人の食生活を考えると明らかに不足しがちである。
現代人に必要なDHAの量は1日およそ1〜1.5gと言われ、これはイワシ1日に2匹
を刺身で食するに相当する。牛や豚肉は頻繁に食しているが背の青い魚となると意外と
少ない。こうした食生活を続けているとDHAは不足の一途をたどる事になる。
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高度不飽和脂肪酸(Polyunsaturated fatty acids)n-3系PUFAには、
DHAをドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid)
EPAをエイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid)
の2種類があります。
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違いとしては下記の生理機能の内上の2つは、
DHAだけの作用のみ
記憶学習機能向上作用(記憶改善、老人性痴呆)
網膜反射機能向上作用(視力低下抑制)
DHA・EPAの両方が持つ生理機能
血中脂質低下作用(高脂血症)
血圧降下作用
抗血栓作用(虚血性心疾患、血小板凝集抑制)
抗腫瘍作用(乳ガン、肺ガン、皮膚ガン、大腸ガン、膵臓ガン、前立腺ガン、子宮ガン)
抗糖尿病作用(血糖値低下)
抗炎症作用(クローン病、慢性関節リュウマチ)
抗アレルギー作用(喘息、アトピー性皮膚炎)
月刊フードケミカル,4,31(1995)より
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食事からの油脂系統については、大きく3種類に分類されるといっていいでしょうね。
1)食事の糖やタンパク質から人間の体でエネルギーとして貯える一価の飽和脂肪酸
系列−−−−食事の内(牛乳.卵.ご飯)
2)植物性の油脂の含まれるもので γ-リノレン酸でこれはアラキドン酸系の代謝を受けて
アレルギーの原因になります。−−−−−サフラワー油や月見草油多くの植物性の油脂
γ-リノレン酸からアラキドン酸系にいたるリノール酸(n-6系不飽和脂肪酸)などを多く
含む植物油脂(n-6系不飽和脂肪酸)に偏った食生活の傾向があり、これにともなう
成人病やアレルギー疾患の増加、およびリノール酸の過剰摂取による弊害が報告されて
きています。
3)α−リノレン酸の系列です。これは魚介類や海草,根菜に多く含まれるもので2)の
γーリノレン酸よりもはるかに酸化しやすく、従来必須栄養素と見なされませんでした
が、
特に脳や神経.網膜にはα−リノレン酸系の油脂であるDHAが多いのです。またその周辺には
EPAが多くあり神経内への移行して再構築したものがDHAと考えられています。EPAもDHAも
二重結合を5〜6個所有するで、n-3系高度不飽和脂肪酸PUFAとも言われます。
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哺乳動物ではリノール酸を摂取すると、生体内でその一部はγリノレン酸を経てアラキドン酸に、また
αリノレン酸を摂取するとその一部はEPA.DHAへ代謝されます。しかし、n-6系列とn-3系列では互いに拮抗作用を持っており、相互変換もできません。よって、これらをバランス良く摂取することが重要といわれています。また、n-6系とn-3系をバランス良く摂取することで、成人病やアトピーが関係している
ことに特に注目され始めました。
要するに1)2)3)の油脂をバランスよくとる工夫が必要になって来ています。2)油脂には、
サラダ油やマーガリンなど代表的な油脂が入ってきますが、n-3系高度不飽和脂肪酸PUFAが相対的に
不足すれば、成人病やアトピーに悩むことになるのです。
ですから食事に紫蘇油や魚介類根菜を多くしておいしく食べる料理を考えないと今の子供は、
アトピーやアレルギー性鼻炎に悩むだけでなく脳の発達も遅れてすぐに成人病に追いまくられるような
事に成りかねないのです。
EPAは、DHAを作るのには重要な物質で必ずDHAと共存関係にあります。ただ神経の奥深くには、DHAが多いというだけですが、自然界ではこれも補うようにバランスをとっていると思われます。
please send e-mail to 三牧 剛太郎