第１１７回日本薬学会 生薬部会 一般口演 口演要旨
燕窩抽出物の薬理作用 第１報 強心作用
日本ハイポックス 藤岡 睦、新納靖規、西川洋史、香田 繁、三木徳太郎
【目的】 燕窩（えんか）は、漢方薬あるいは中華料理の高級食材として古来より
用いられてきた。その薬効として、疲労を調え補う、咳・たんを鎮め、慢性の下痢・
嘔吐を治し頻尿を止めるなどが中薬大辞典に記載されており、極めて高価であるに
もかかわらず中国人社会では滋養強壮薬として繁用されている。また燕窩はシアル
酸糖鎖を天然物の中で最も多く含むこと、ＥＧＦ様活性を示すことが既に報告され
ている。しかし、その薬理作用についてはまだ不明な点が多いことから、我々は燕
窩の薬理作用について検索を行っている。今回は、燕窩水抽出物が循環動態に及ぼ
す影響について検討した結果、顕著な強心作用を認めたので報告する。【実験およ
ぶ結果】 麻酔したビーグル犬を人工呼吸下に開胸し、左心室表面にアーチ型ストレインゲ
ージを装着して心臓の収縮力を、また大動脈内にカニューレを挿入して血圧をそれ
ぞれポリグラフに記録した。燕窩水抽出物およびN-アセチルノイラミン酸（ＮＥＵ）
を投与し、心拍数、心収縮力および血圧に及ぼす影響について比較した。その結果、
燕窩水抽出物は心拍数に影響を及ぼさずに心収縮力を顕著に増強する有用な強心作
用を示し、この心収縮力増強作用は、Ｉ．Ｖ．投与では3 mg/kg以上で用量依存的に
認められた。一方、ＮＥＵでは、30 mg/kg（Ｉ．Ｖ．）の用量においても心拍数お
よび心収縮力に変化は認められなかった。また、燕窩水抽出物は1 mg/kg（Ｉ．Ｖ．）
から用量依存的に血圧下降作用を示し、その作用は拡張期血圧に対して特異的であ
った。NEUは血圧に対してもほとんど影響を及ぼさず、燕窩水抽出物とNEUの循環動
態に及ぼす作用には明らかな違いがみられた。なお、燕窩水抽出物は十二指腸内投
与においても同様の作用を示した。
