第117回日本薬学会 生薬部会 一般口演 口演要旨
甘草発酵抽出物(HL-626)の薬理作用 第3報 肝臓保護作用
日本ハイポックス 新納靖規、藤岡 睦、西川洋史、香田 繁、三木徳太郎
【目的】 甘草は数多くの薬理作用を有し、肝炎治療剤として評価の高い小柴胡湯
をはじめ多くの方剤に配合されている。しかし、主成分であるグリチルリチンには、
偽アルドステロン症、低カリウム血症等の副作用が認められている。そこで、甘草
の抽出物からグリチルリチンを除去することにより、副作用および独特の甘味をな
くし、甘草本来の薬効を引き出すことを目的として甘草の修治方法について検討し
た。その結果、甘草を食用乳酸菌で発酵修治した甘草発酵抽出物(HL)が、肝臓
保護作用、抗潰瘍作用、末梢血管拡張作用等を示し、かつ安全性が極めて高いこと
を見いだした。今回は、HLの肝臓保護作用について報告する。
【実験およぶ結果】 (1)四塩化炭素誘発急性肝障害の抑制作用
マウスに四塩化炭素を単回皮下投与して惹起した急性肝障害モデルにおいて、HL
を四塩化炭素投与の直前と18時間後に経口投与した。その結果、HL投与群では血
清トランスアミナーゼの上昇が著明に抑制され、病理組織学的には肝細胞の空胞変
性および肝細胞壊死の減少が認められた。
(2)アセトアミノフェン誘発急性肝障害の抑制作用
マウスにアセトアミノフェン(AA)を経口投与して惹起した急性肝障害モデルに
おいて、HLをAA投与前1週間経口投与した。その結果、HL投与群では血清ト
ランスアミナーゼの上昇が著明に抑制された。
(3)エタノール麻酔に対する拮抗作用
マウスにHLをエタノール投与の30分前に経口投与し、エタノールの経口投与によ
って生じる中枢抑制に対する作用を検討した。その結果、HL投与群ではエタノー
ル投与によって生じる自発運動の減少および昏睡状態がほとんど見られず、エタノ
ールに対する著明な拮抗作用が認められた。