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麻黄
唐商人が持ち渡った上品である,渋くて少し辛味あるものを用いる事.朝鮮の品は丈が
短いけれども新鮮であるから中々佳品である.今西洋人の横浜に持来る品は青く細長く
辛味は少しもしない.使用に堪えない.和産と称する物は犬木賊(いぬとくさ)という
ものである.即ち節節草である.漢産を松岡玄達が雲花子などと言うのは効用を知らな
いためである.従うべきではない.
大黄
私が少年の頃は,錦紋大黄という馬蹄形をした極上の品が流れて来た.徐々に品質が低
下し近頃では佳品が来ない.西洋人が今横浜に持込む品物は皆な劣品で効力は低い.疑
うらくはアフリカ,ベルシャ,ダツタンなどの産品であろう.本邦に唐種大黄というも
のがあるが効果はない.香川大冲が”唐種大黄は長服しても人を虚せず,微毒症には甚
だ佳なり”と言ったのは妄想にも甚しい.用いるべきではない.
大戟
必ず綿大戟を用いる事.これは誰でも知っている事であるが,高価を避けて紫大戟を用
いるならば,効果は大いに劣ってしまう.
甘遂
肥大した白色の品物を撰ぶ事.虫が付きやすい品であるからガラス壷に保存し風気を防
ぐ事だ.和産も掘出したまま干して,干し上ったら土を洗い落とし用いれば効果あると
いえる.薄皮なので堀だして直ぐに洗うと生薬の持っている成分が流出,気も脱するの
で効果が無いと岑先生の話である.私は未だ試していない.
附子
東洞先生からは附子を用いず烏頭を用いる.効力は最も強い.奥羽産実大の物が佳品で
ある.微火にて煎煮する事,舶来の大附子と称する物は製造(修治)したものである.
用いるべからず.白川附子も製造(修治)している.持いべからず.
半夏
房州から産する物が佳品である.その形は丸く”高い”物が甚だ佳品である.越後産の
佳品である.”下り”と称する物は形が少し平たくこれに次ぐ物である.潔白で粒の多
きな物を用いる事.粒の小さな物は性力が充実せず効果が劣る.
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五味子
天保の初めまでは黒色で潤ある物が朝鮮より入荷していた.その品は甚だ良い物であっ
た今本邦で五味子と称する物が数品あるが色,形同じではない.酸味ばかりが強い物は
俗に「えびがつら」と称する物の実であろう.
括婁実
東洞先生の試験で土瓜実を用いた所,胸痺,痰飲,咳●にはその効果著しく括婁仁の及
ぶところではない.今は薬舗でも土瓜実を堀り●者が多い.なお仲景方には実と称して
仁とは呼ばない.
葛根
偽品なし,板葛根と称して刻むとき,続々と崩れ,粉の出る者が佳品である.色薄黒く
,堅い者は悪い.上品下品共に白色に見せようとして外面に石灰を塗布している.よく
落して用いる事.漢では家園にも葛を植えるので後世方に「家葛」の名があるが別物で
はない.和産は皆な山生,野生である.
防巳
唐と称する物は効力著しくない.ただ徳●の時,清朝より苗を取寄せられて,駿府薬園
へ植付けられた所よく繁茂した.文化の頃まではあったが今は絶えて無くなった.これ
(防巳)は利水の効果が舶来の品に勝っている.大便をも略略通ぜせしむ.今,処方に
用いられる防巳という物は木通を大きくした形で,何処の産地か詳かにされない.朮,
茯苓,烏頭などの助けを得て僅かに効果があるのが分る.