St.John's Wort
St.John's Wortについて
(米ニューズウィーク誌5/5/97号より)
カリン・テーラーの暗いムードは不眠症、無気力感からきていた。去年の夏は最悪で、生も死もどうでもよかった。彼女の主治医は向
精神薬をすすめたが、薬は避けたかった。幸運なことに彼女の場合、友人の紹介によりハーブの1種St.John's Wortと巡り会った。服
用後3週間程でテイラーは鬱(うつ)から立ち直った。トロントでアカウンタントして働く彼女は今も1日2カプセルの服用を続けてい
る。「私は立ち直った」
黄色い花のSt.John's Wortはラテン語でHypericum perforatumといい、2000年にわたり愛用されてきた。起源はギリシャ時代に体内の
悪魔払いとして使用されてから、と言われている。
ヨーロッパでは15年前から鬱の症状改善に愛用されている。ドイツでは1年間に300万もの処方箋が発行されている。これはプロザック
の25倍の発行量であるSt.John's Wortについての本が発行されてから米国でも人気に火がついた。米国の健康食品店では「カバ・ルー
ト」「プレッグ」等が気分向上の補助剤として人気がある。が「St.John's Wortが1番効果的」とハーブ研究所のマカレブは言う。
効果の実証は?1994に権威ある老人精神学・脳神経学ジャーナルでは17の論文すべてがSt.John's Wortの論文だった。ある実験では
3,250人中80%の軽〜中程度の鬱患者に効果が認められた(服用4週間)。昨年の8月発行のBritishMedicalジャーナルでは合計1,757人
の軽〜中程度の鬱患者を対象に23種類の実験をした。米国とドイツの実験ではSt.John's Wortの効果はプレスボ(偽薬)より3倍効果
的だった。テキサス大学のマーロウ博士はいう。「ハーブは確かに効果的だ」。
効果は実証されているが、まだメカニズムの大半が解明されていない。長期の使用後の副作用についてもわかっていないし、重度の鬱
患者に有効かもわかっていない。
適量として0.3%のHypericum抽出成分を含む300mgのカプセルを1日3回が奨められている。効果が現れるまで数週間かかる。
多くの医師はハーブより薬(プロザック等)の処方を好むがエール大学の医師ブルームフィールド博士(Hypericum&Deperessionの著
者)のようにSt.John's Wortを好む医師もいる。昨秋に彼の本が発売されてからは多くの医師から問い合わせを受けている。半年前に
は数十人だったSt.John's Wortを鬱治療に使用する医師の数は数百人に増えている。
グラミー賞にノミネートもされたジャズ歌手ジャネット・ローソンは長年鬱に悩まされていたが、処方薬は服用したくなかった。
St.John's Wortとカバ・ルート等をミックスしたハーブを健康食品店で購入し症状もすっかり改善された。カリフォルニア州在住の48
才エリザベス・ダンテもSt.John's Wortを愛用してから鬱症状が改善された
St.John's Wortはビタミンのように服用してよいのか?数百万人のドイツ人が服用しているが「死亡」は報告されていない。3,250人
の鬱患者を対象にした実験では2.4%のみが軽いアレルギー、不快感等の軽い副作用を報告した。パーヂュ大学のハーブ研究家バロ・
タイラーによれば「プロザックは不眠症、体重減少等の重い副作用があるが、St.John's Wortにはそれがない」
一番の心配点はハーブが「日光アレルギー」を引き起こす可能性があることだ。
St.John's Wortを大量服用した羊は太陽を浴びた後病気になり、死んだ。
人間の場合そのような報告例はまだない。しかしブルームフィールドはその危険も忘れぬよう警告する。日光に敏感な者、それを引き
起こす可能性のある薬を服用中の者は特に気をつけるべきである。米NIHのような機関ではこれから研究が始まろうとしている。