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            痛風について
 
 痛風は糖尿病とともに現在では、最も広く知られている成人病の一つであり、戦
前ではまれな疾患であった。しかし、食生活や生活様式、社会環境の変化とともに
増加しており、(財)痛風研究会〔理事長:御巫 清允(ミカナギ キヨノブ) 自治医大
名誉教授〕なども設立され、対応を進めている。

1.痛風の歴史
・・・・・・・                                                                  

 紀元前 5世紀にヒポクラテスは既に痛風を知っていた。昔は帝王をはじめ、美食
することのできるハイクラスの人々に痛風がよく発生し、いわゆる「帝王病」とい
われた。歴史に記録されただけでも、マケドニアのアレキサンダ−大王、英国のヘ
ンリ− 8世、アン王女、フランスのルイ 1世、元のクビライ、政治家のウイリアム
・ピット、オリバ−・クロムウエル、哲学のベ−コン、科学者のフランクリン、万
有引力のニュ−トン、進化論のダ−ウイン、 宗教改革のル−テルらが痛風であった
ことが知られている。ただ、このような歴史に名をとどめるような人達ばかりが痛
風であったのではなく、美食をしたり、或いは肥満した庶民の間でも当然、痛風は
あっ Qたと思われる。ただ、歴史に残っていないだけであろう。

2.痛風とは  gout
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 痛風とは、風が当たっても痛むことから名付けられた。ドイツ語では、gicht と
いい、「呪文でつけられたもの」の意味である。これは激しい痛みの起こる痛風を
表現している。goutはラテン語で、 1滴を意味する guttaに由来するが、世の欧
州では、腐った体液の“しずく”により痛風が起こると考えられていたことによる。

(1)痛風の定義
 プリン代謝異常に基づく代謝性疾患で、尿酸一ナトリウム塩又は尿酸が過飽和の
状態で結晶として析出し、それが組織に沈着することにより、一つまたはそれ以上
の臨床症状を示す全身性疾患である。痛風になりやすいのは、高プリン食摂取者、
アルコ−ル過飲者にみられ、高脂血症、肥満、積極的性格と関連が深いとされてい
る。なお、遺伝の証明される例が20%位との報告もある。

(2)日本における痛風の疫学
 痛風は10年前と比較して約 2倍に増加しており、全人口の約0.3〜0.5%(中年以
降の男性の 1.2%)、約50万人と推定され、これは米国での発生頻度の調査報告と
ほぼ同じである。なお、痛風の臨床症状が見られない無症候性高尿酸血症患者は、
痛風患者の 5〜10倍存在すると推定されている。
 都会の方が田舎より多い。また、多くある代謝性疾患の中で、痛風ほど性別の偏
りのあるものは少なく、男女比はほぼ 20:1で圧倒的に男性に多く発生するが、20
歳代以前の発症は稀である。女性の大部分は、いわゆる閉経期が過ぎてから発病し、
高血圧症を合併している。  --出題(3)
  痛風は、41〜60歳のいわゆる壮年期の患者が痛風患者全体の約70%位と推定され
ている。非常にエネルギッシュで、見るからに男性的で活動的な、中年の男性が中
足趾に、何の原因もなく激しい痛みを感じたら、まず痛風を疑うべきであろう。
 一般的に若い年代で痛風になると、壮年期に発病する痛風と違い急激に腎機能を
悪化させ、腎不全になることが多いようである。

3.プリン体と尿酸
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 DNA複製は細胞周期のS期(合成期)に行われるので、デオキシリボヌクレオ
チドの細胞内濃度もS期でのみ10μM 程度に上昇し、それを合成する諸酵素もS期
に上昇する。

(1)プリン体とは
 E.フィッシャ−は1882〜1907年にかけて、この骨格をもつ一連の化合物を研究
し、母体化合物をプリンと命名した。
  プリンはピリミジン環とイミダゾ−ル環との縮合環からなる複素環化合物で、天
然には存在しないが、誘導体のプリン類、プリン塩基として、動植物に含まれ、生
化学上重要な物質で、尿酸はその最終代謝物質である。
  酸、塩基の両方に塩を作るが、プリン骨格をもつ物質の多くは塩基性で、プリン
の誘導体としてアデニン、グアニン、ヒポキサンチン、キサンチンなどがありこれ
らを総称してプリン塩基という。
 核酸(DNA、RNA)、エネルギ−担体(ATP、GTP)、コファクタ−
(NAD、NADP)、情報伝達物質(CAMP、CGMP)、神経伝達物質(アデ
ノシン)などを構成する成分で、細胞の基本的な機能を維持する上で重要な物質で
ある。また、カフェインなどのアルカロイドにも含まれる。 
  なお、菓子のプリンはカスタ−ドプディングがプリンとなまったものである。

        〔図 1〕プリン体に関連のある環系物質

(2)プリン体の合成と代謝
 プリン体は生体にとって欠かすことの出来ない重要な物質であるため、細胞はそ
の合成を新規合成経路(de novo合成) と、塩基やヌクレオチドを再利用して用い
ることもできる再利用経路(salvage合成)とによって生合成している。 
  この二つの経路が、生体の要求に応じて巧妙に調節される。
1.de novo合成
 de novo 合成とは、ラテン語の“新規の”が語源、以前はヌクレオチドの一つの
 合成系を指す狭い意味に使われていたが、現在では生体構成成分が、簡単な素材
 から新たに合成されることを示す用語である。
 プリン体の de novo合成経路は、非プリン性の前駆体(グルタミン、グリシンな
 どの低分子のアミノ酸)、葉酸、二酸化炭素などにより、プリン体を新たに合成
 する経路である。
2.salvage合成 
 salvage 合成とは、廃物利用という語源からきたもので、その物質の代謝中間体、
  特に部分分解産物を素材として、その物質が再合成されることを言う。 
 プリンの合成は極めて複雑でエネルギ−を要するので、塩基やヌクレオチドが体
  外あるいは細胞内で得られた場合は、それを再利用して用いることもできる。つ
  まり外来性(食事性)と、あるいは体内で分解によって生じたプリン塩基を再利
  用する経路で、これを再利用経路(salvage合成)と言う。 
3.プリン体の代謝
 プリン体の分解経路では、キサンチンオキシダ−ゼにより触媒される 2段階の反
  応を経て尿酸が合成される。 

(3)生体における尿酸のバランス
 血清尿酸値は、人種・性別・年齢・食事内容及び運動による影響、日内・日差変
動などによって異なり、中でも性差と年齢差によって大きく違ってくる。
 血清尿酸値は小児期までは性差がなく、約 4mg/dl程度であるが、男性では思春
期に急激な上昇を示し、男性は女性に比べ、平均1.0〜1.5mg/dlほど高くなる。女
性は閉経以後上昇し、男女差は、0.5mg/dl 程度になる。これらは欧米でも同様に
認められているが、その理由としては性ホルモン分泌が考えられている。
 ヒトには尿酸分解酵素(ウリカ−ゼ*)は無く、尿酸は分解されないので、生体
内ではプリン体の最終産物が尿酸である。--出題(1)
正常人では平均 1,200mgの尿酸が体内でプ−ルされ、その60%に相当する 700mgが 
1日に産生される。同時に産生とほぼ同じ速度で排泄され、平衡を保っているので、
プ−ルはほぼ一定の状態で、バランスが保たれている。
 これら尿酸の産生経路としては、次の三つの経路があるが、プリン産生の大部分は
体内での生合成による。          
A.体内で新しく生合成(de novo合成経路)         〔図 2〕尿酸の体内動態
B.細胞や組織から放出される核酸成分の代謝産                           
 物(salvage合成経路)   
C.食品中に含まれている外因性のプリン体
 尿酸は、その約70%(約 500mg)が腎臓より排泄され、他の30%(約 200mg)は、
  消化液中に排出され腸管に出る。そしてその大部分は腸内細菌によって分解され
  るなどの腎外性排泄による。
  腎臓からの尿酸の排泄は、次の四つの機序(four component system)による。
1.糸球体における濾過(filtration)→100%濾過
2.尿細管における再吸収(presecretory reabsorption)
    →近位尿細管で95〜98%近く再吸収
3.尿細管における分泌(secretion)→糸球体濾過量の約40%が尿細管に分泌
4.分泌部位より遠位の尿細管における再吸収(postsecretory reabsorption) 
    →遠位尿細管で、約75%近く再吸収
 従って、結局、糸球体濾過量の約10%が尿中に排泄される。その量は通常食で約
   500mg/日になる。これに腎外排泄量 200mg/日が加わって、 700mg/日の排泄
  量となる。
 近位尿細管で再吸収する過程と遠位尿細管で分泌する過程のどちらかに障害が起
  きると、尿中への尿酸排泄量が変化する。
*ウリカ−ゼ:uricase or urate oxidase 尿素酸化酵素
  ウリカ−ゼは銅を含有する酵素で、その 1単位は尿酸 1μgを、1分間(37℃)
    で分解する作用がある。
    霊長類と呼ばれる人類やチンパンジ−は、尿酸を分解する酵素(ウリカ−ゼ)
  は持っていない。しかし、霊長類以外の哺乳動物や微生物はウリカ−ゼを持っ
  ているので、尿酸をさらに分解して、水溶性の高いアラントインにすることが
  できる。アラントインは水溶性であるから、尿酸のように結晶になって関節炎を
    起こすことはない。霊長類は進化の過程においてウリカ−ゼの遺伝子に突然変
  異が起こり、作用しなくなったと考えられている。
  なお、魚類、両生類ではアラントインがさらに、尿素とグリオキシル酸に代謝
  される。

(4)尿酸の排泄に影響を及ぼす因子
  尿酸排泄に影響を及ぼすものとして次が挙げられる。
1.尿量
  体液量に変動を来さないような条件下では、尿量の増加により尿酸排泄は増加す
  る。この機序としては、尿酸の尿細管でのpostsecretory reabsorptionの低下が
  考えられる。
2.体液量
  体液量が増加すると尿酸排泄は増加し、逆に体液量が減少すると尿酸排泄は低下
  する。尿酸分泌の増加または低下がこの機序として考えられており、典型的病態
 としては高カロリ−輸液時の低尿酸血症、または脱水時、利尿剤投与時の高尿酸
 血症がある。

3.体液の酸塩基平衡
  尿酸は有機酸の一つであり、尿細管においてはその他の有機酸と共通のcarrier、
 anion-exchanger によって、再吸収と分泌が行われている。従って、尿酸以外の
 有機酸が過剰になると、尿細管での分泌の過程で競合が生じ、その結果、尿酸排
 泄が低下する。尿酸アシド−シス、糖尿病性ケトアシド−シスがその例である。
4.尿の pH
 尿酸の溶解度は極めて高い pH依存性を示す。ヒトの尿の pHは、5.0以下〜8.0
 以上までの変動を示すため、尿への尿酸の溶解性は変化が激しい。尿中尿酸は酸
 性状態においては溶解度が低く、結晶化しやすいため、尿中の pHを上昇させ、
 尿酸の溶解度を上げる必要がある。しかし、尿酸Na塩、リン酸Ca、炭酸Caは pH
  6.5以上ではかえって溶け難くなるので、尿のアルカリ化は pH6.0〜6.5程度に
 調節するようにアルカリ化剤を投与する。しかし、痛風患者の尿中の pHは、健
 常者に比べて低いので、尿のアルカリ化は、特に尿酸排泄剤使用時の尿中尿酸析
 出の防止に重要である。
5.各種ホルモン
  ADHは尿酸のpostsecretory reabsorptionを亢進させ、尿酸クリアランスを低
 下させる。アルドステロンは体液量の変動を介して尿酸代謝に影響する。
  その他、アンジオテンシン、ノルアドレナリン、女性ホルモンなども影響する。

(5)薬物と尿酸
 続発性高尿酸血症を起こすおそれのある薬物は次のように区別される。
1.尿酸産生の亢進を来すもの
  メトトレキサ−ト、6−MP、シクロホスファミドなどの抗腫瘍剤
    --核酸の turn overの亢進(細胞崩壊)による
  フルクト−ス、キシリト−ル
   --フルクト−スはプリンヌクレオチドの異化作用亢進
   キシリト−ルは de novo合成の亢進
 イノシン
    --外因性プリンであるイノシンは、プリン代謝経路の中間産物
2.尿酸排泄の低下を来すもの
  a.腎尿細管での尿酸転送に影響するもの
 b.腎毒性のため、腎機能低下によるもの
  利尿剤(チアジド系、フロセミド、スピロノラクトン、エタクリン酸、アセタゾ
     ラミドなど)
    --細胞外液量の減少の結果、間接的に尿細管での尿酸再吸収の亢進。常用量投
   与で、血清尿酸値は1.0〜2.0mg/dl程度上昇する。   --出題(8)
  アスピリン
  --アスピリンの尿酸排泄に及ぼす影響は、パラドキシカルで、1〜2g/日投与
     では尿細管からの分泌を抑制し、血清尿酸値を上昇させるが、 3g/日以上
   では再吸収も阻害される結果、尿中尿酸排泄を増加させる。
 ピラジナミド
    --ピラジン酸に代謝された後、選択的かつ強力に尿酸分泌を阻害する。
  エタノ−ル
    --エタノ−ルは肝で代謝されて、アセトアルデヒドになるが、それと並行して
   ピルビン酸が乳酸に変化する。腎において過剰な乳酸は尿酸排泄と競合する
   ため、尿酸排泄は低下する。
 その他、エタンブト−ル、ニコチン酸も高尿酸血症をきたすが、その機序は明ら
でない。

4.痛風の分類と症状
・・・・・・・・・・・                                                          

  尿酸が作られ過ぎか、作られた尿酸がうまく排泄されないか、あるいはその両方
によって痛風が起こるのであるが、その症状は、発作と呼ばれる激痛を伴う超急性
の関節炎症状と、それを引き起こすもとになっている高尿酸血症(血液中の尿酸が
多い)の二つが主なものである。高尿酸血症であれば、必ず痛風になるとは限らな
いが、高尿酸血症が続くと痛風になる頻度は高い。従って、痛風対策とは尿酸をい
かにうまくコントロ−ルするかにつきる。
 痛風発作の機序が明らかにされているが、発作の自然消退の機序については全く
不明である。

(1)痛風の発症
 結晶化した尿酸結晶によって種々の可溶性因子が相加的・相乗的に働いて激しい
急性関節炎(痛風発作)が引き起こされる。
 この機序を要約すれば、関節の中の尿酸塩の結晶を白血球が攻撃して痛風発作が
起こる。白血球の一種である好中球は、細菌などの体外からの異物を貪食して排除
する働きがある。尿酸は本来生体中にある物質なので異物ではないはずであるが、
飽和してできた尿酸塩の結晶は、表面の構造が不規則で、しかも負の電気を帯びて
おり、好中球を刺激しやすい性質がある。そして好中球はこの結晶を異物として認
識して攻撃対象とし、痛風発作を起こす。
 しかし、尿酸塩の結晶が関節の中にあっても、いつも痛風発作が起こるわけでな
い。血液中の尿酸濃度(血清尿酸値)の高い状態が長く続くと、関節の中には常に
結晶尿酸塩があるので、絶えず痛風発作が起こるはずであるが、時々しか起こらな
く、普通は無症状である。つまり、好中球は尿酸塩の結晶があれば必ず攻撃するわ
けでない。
 血液や関節液の中には、タンパク質、ペプチド、電解質などの多くの物質が含ま
れている。これらは互いに影響し合ってそれぞれの性質を変化させている。最近の
研究で、好中球が尿酸塩を攻撃したり、しなかったりするのは、結晶に付着してい
るタンパク質の種類によることが判ってきた。好中球はアポB、アポEなどのタン
パク質が表面に付着した尿酸塩を攻撃せず、これらが付着していない尿酸塩を攻撃
するものと推定されている。また、痛風発作は関節腔の内面に付着していた尿酸塩
が何らかのはずみで、剥がれた時に起こることが判ってきた。表面の尿酸塩が剥が
れて、その下にあるアポBタンパクが付着していない尿酸塩結晶が関節液に放出さ
れると発作が起こる。
(2)痛風の区別
  痛風は、A.尿酸産生過剰型、B.尿酸排泄低下型、C.両者の混合型(全体の約50%)
D.その他の型(少ない)に分類される。

〔表 1〕痛風・高尿酸血症の臨床的分類法(松本)            
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・          

 病型    尿酸排泄量/日*  CUA/CCr比  尿中UA/Cr比 
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  過剰生産型     900mg以上         15%以上           1.0以上
  混合型                           5〜15%           0.5〜1.0
 排泄低下型   300mg以下     5%以下      0.5以下    
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・          

    *:普通食摂取
    CUA:尿酸クリアランス  CCr:クレアチニンクリアランス  UA:尿酸  Cr:クレアチニン

 尿酸合成過剰型と尿酸排泄低下型痛風を区別するには、できれば24時間尿、ある
いは早朝一回尿の尿中の尿酸とクレアチニンの比をとり、その比が 0.49 ならば正
常で、それ以上ならば合成過剰型、それ以下ならば排泄低下型と考える。これは通
常、尿中に排泄されるクレアチニンの量は一定で、尿酸はその約半量であることに
基づく。さらに簡便な方法としては、24時間尿の尿酸量(24h-Ura)が、400mg以下
ならば排泄阻害型、900〜1,000mg 以上( 5日間のプリン制限食下で、600mg/日以
上)ならば合成過剰型としても大体間違いはない。  --出題(2)
 しかし、最近では排泄阻害型、合成過剰型を独立した病態として扱わず、二つは
関連していると考えられている。例えば、アルコ−ルやストレス等の原因で、尿酸
の生合成が促進され血清尿酸値が上昇すると(合成過剰)、尿細管での再吸収が起
こり見かけ上排泄が低下(排泄阻害)するなどである。

(2)痛風の症状
 痛風の症状としては、1.急性痛風性関節炎、2.痛風結節、3.痛風腎、4.尿酸結石
などがある。
1.急性痛風性関節炎
 痛風の特徴的な症状は急性痛風発作で、この発作のみで痛風と診断される場合が
 多い。全症例の75%は、第 1趾MTP(中足趾)関節に初発する。その他、足踝
 (くるぶし)、足根部、膝関節にも見られる。関節炎症状は多くの場合、夜間に
 突然、激痛を伴い発症する。通常は関節の腫脹、発赤、疼痛がある。発作は24時
 間以内にピ−クに達し、多くは単関節炎の形をとる。10日位で自然に軽快する。
 尿酸結晶が関節液中に析出すると、痛風発作の数時間前から 1日前に、発作罹患
 部に前兆として熱感、違和感、鈍痛、重圧感などの症状が、約半数例に前兆とし
 て見られる。多くの患者では、次の発作が出現するまで数カ月〜数年にわたって
 無症状であるが、時とともに発作の頻度が増加し、多関節が侵され、 1回の発作
 の持続時間が長引く。外傷、飲酒、手術などのストレス、長時間歩行、運動、硬
 い靴による圧迫などが発作の誘因となる。
 痛風性関節炎があるのに、高尿酸血症に対する適切な治療が行われないと、一般
 に発症後10年位経過すると、慢性痛風性関節となり症状が持続する。
 関節滑膜、軟骨下骨、軟骨、関節包、腱などに尿酸塩が沈着し、関節が破壊され
 て変形を伴うようになる。
2.痛風結節(tophus)
 過剰の尿酸塩が軟骨の内外、骨、滑膜、腱、皮下組織などに沈着し、結節を形成
 したものである。痛風結節は血流が悪く、体温の低い部位に発生しやすい。好発
 部位は耳介軟骨、足趾関節、肘関節、手指関節、足踝などである。
  高尿酸血症に対する適切な治療が行われないと、罹患期間が長くなるにつれ、痛
 風結節の合併頻度が増す。
3.痛風腎
 尿酸塩が腎臓にも沈着し、痛風腎による腎障害を来す。また痛風における腎障害
 は、尿酸塩の沈着以外に痛風に合併する高血圧、高脂血症、糖尿病による細動脈
 硬化性腎病変などの心血管系の合併症を伴いやすい。
  痛風患者の80〜90%に何らかの腎障害が現れると言われる。これは高尿酸血症・
 高尿酸尿症は、尿酸塩の結晶沈着を間質や尿細管に引き起こし、慢性間質性腎炎
 を発症させる。最も障害される部位は髄質であるが、この部位は尿細管の尿酸濃
 度が高く、尿の pHが低いため、尿酸塩の沈着を来しやすいと考えられている。
  痛風腎を合併した患者でも、高度の腎不全を来さない限り自覚症状は認めない。
 また、高度の腎不全状態であっても、腎機能が同程度の慢性糸球体腎炎と比べて、
 悪心、嘔吐、食欲不振、浮腫、呼吸困難などの症状は軽度であるのが特徴である。

〔図 5〕痛風の臨床経過(西岡:現代痛風学-一部改変)

(4)痛風発作発生の部位
 痛風は、関節液の中の尿酸の濃度が上昇し、溶解せず結晶になって、関節腔に沈
着し、それが何らかの刺激で剥がれて起こる。従って、痛風発作は結晶が沈着しや
すく、剥がれやすい関節に起こる。足趾の関節の部位は体の中心より最も遠いので、
体温も 3〜4 度は低い。温度が下がると尿酸の溶解度は低下し結晶ができやすい。
また、直立歩行する人類は、足趾の関節にはかなり体重がかかる。これが刺激とな
って、沈着していた尿酸塩が剥がれやすくなる。激しい運動をした後に発作が起こ
るのはこのためと言われている。また、窮屈な靴を履いていると足趾の関節に痛風
結節ができやすい。足首の関節もこの二つの条件を満たすので、痛風発作が起こり
やすい。足首を捻挫した直後に痛風発作が起こりやすい。 --出題(4)
  膝関節にも痛風発作が起こることがあるが、足趾、足首の関節に比べると少ない。
これは膝は足趾より体温が高く、軟骨が発達していて体重負担を軽減する構造にな
っているからであろう。膝に発作を起こす人の多くは、それまでに足趾に何回も痛
風発作を起こした人である。このような人では、尿酸塩の結晶は膝ばかりでなく、
体内に多く蓄積されている。
 さらに長期間、痛風の治療をせずに放置すると、尿酸塩による痛風結節が皮下に
もできる。この場合も体温の低い部位にできる。例えば耳であるが、耳の上半分は
下半分より温度が低いので、上半分にできる。さらに、これは機械的な刺激によっ
てできやすいので、帽子をかぶる習慣のある人に耳の痛風結節が起こりやすい。

(5)痛風に伴いやすい合併症
 慢性化した痛風を治療せずに放置しておくと、腎に尿酸が沈着して機能が低下し
(痛風腎)、腎不全へと進行する。その他、痛風患者は種々の合併症を伴いやすい。
 松本(名市大)によれば、痛風で来院した患者が、初診時に痛風以外に合併して
いた疾患の頻度は、病的肥満(標準体重+20%以上)45.9%、高血圧症43.9%、高
脂血症29.1%、肝障害(脂肪肝・アルコ−ル性肝障害)23.5%、心臓障害(狭心症、
心筋梗塞)19.9%、尿路結石16.8%、糖尿病10.7%、腎機能低下 4.6%、脳血管障
害 1.5%であった。

5.痛風の治療
・・・・・・・                                                                  

  痛風治療では、痛風発作時の急性関節炎に対する対症療法と高尿酸血症に対する
原因療法の治療とに分かれるが、これらはそれぞれ異質のものと考える必要がある。
 薬剤によって血清尿酸値を低下させることは、痛風発作の予防はできるが、関節
炎の炎症を軽減させることはできない。

(1)痛風治療の原則 
 痛風の治療では、次のことをよく理解しなければならない。
1.痛風治療で一番問題になる薬物選択の誤りは、尿酸生成過剰型の高尿酸血症に尿
 酸排泄促進剤を使用することである。尿酸排泄促進剤の使用は、尿中尿酸量を増
 加させるため、尿量の減少や pHの低下は、尿酸の不溶性を増し、結晶析出や腎
 組織(特に髄質間質)への尿酸の沈着を起こし、尿酸結石や腎障害をきたす。
2.痛風は血液中の尿酸値が高いことによって発病するので、尿酸値を少なくする。
 尿の pHを 6.5付近に調節するのが最もよく、血清尿酸値を急に下げ過ぎると痛
 風発作を誘発しやすいので、徐々に下げる方がよい。また、高尿酸血症治療の初
 期(通常、治療開始後 6カ月以内)は痛風発作が起きやすい。適正な血清尿酸値
 は 5〜 6mg/dl程度である。
3.治療が長期にわたり、一生治療を続ける必要がある。
  尿酸排泄剤または尿酸合成阻害剤によって、高尿酸血症の治療を開始してから、
 多くの症例では 6カ月ごろに血中尿酸値が安定する。従って、その間の代謝動態
 の変動が、関節周囲の結合織に働き、尿酸排泄剤・尿酸合成阻害剤を使用するこ
 とにより、かえって痛風発作を誘発することがある。
4.放置すると痛みが激しくなり、皮膚や関節に結節ができ、腎不全にまで進行する。
5.無症候性高尿酸血症の治療は、食事と日常生活の注意を優先させ、定期的に血清
 尿酸値などを測定する。10mg/dl以上の極端な無症候性高尿酸血症の場合は最初
 から薬物治療を行う。この場合の目標とする血清尿酸値は 6〜 7mg/dl程度とす
 る。
6.食事療法は以前ほど強調されないが、高尿酸血症治療の基本であることに変わり
 ない。痛風は体内に過剰な尿酸が蓄積した状態の場合に発病する。食品中のプリ
 ン体を多く摂取すると、体内で利用されず尿酸となるので、尿酸値をコントロ−
 ルするための食事療法は重要である。
                                      〔表 2〕血中尿酸値と対応濃度 
(2)痛風治療開始と尿酸値          ------------------------------------        
                                                                                
  細胞外液の尿酸飽和度に対応する血      状態        血中尿酸値   
液中の尿酸レベルは、 6.4mg/dlで、     正常             5.4〜6.5mg/dl
従って、尿酸の血中の値が、 7.0mg/    生理的変動幅    6.6〜7.5mg/dl
・以上になると、生体の尿酸の処理能    境界型高尿酸血症  8.5mg/dl     
力が追いつけず、尿酸は飽和状態とな   高尿酸血症(要治療)9.0mg〜/dl   
り結晶化し、これが関節内に貯留して  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・      

痛風発作が起こるようになる。このような理由で、高尿酸血症の治療は、血中尿酸
値が 9.0mg/dl以上になると、一般に治療を開始する。    --出題(5)

6.痛風治療剤
・・・・・・・・                                                                

 高尿酸血症は尿酸生成過剰の代謝性と、腎からの尿酸排泄低下のある腎性及び両
者の混合型があり、薬物治療の場合それぞれによって使用する薬剤を選択する。
 尿酸排泄促進剤、尿酸合成阻害剤はともに、痛風発作の間欠期に治療を開始する。

(1)痛風治療に使われている製剤
 現在、痛風治療に使われている製剤は次のようである。

〔表 3〕痛風治療剤一覧表                                  
----------------------------------------------------------------------
A.痛風発作予防・鎮痛剤
1.痛風発作予防剤(薬効分類:394)
  コルヒチン
2.非ステロイド性抗消炎剤(薬効分類:114)
 ジクロフェナクNa(ボルタレン他)、スリンダク(クリノリル)、
 フェンブフェン(ナパノ-ル他)、インドメタシン(インダシン他)・・・・アリ-ル酢酸系
  ナプロキセン(ナイキサン)・・・・プロピオン酸系
  ピロキシカム(バキソ、フェルデン)・・・・オキシカム系                   
B.高尿酸血症治療剤
1.尿酸排泄剤(薬効分類:394)
  プロベネシド(プロベネミド、ベネシッド)、スルフィンピラゾン(アンツ-ラン)
  ベンズブロマロン(ユリノ-ム他)
2.尿酸生成抑制剤(薬効分類:394)
  アロプリノ−ル(ザイロリック、アロシト-ル他)
3.尿アルカリ化剤
  重曹(薬効分類:234)、ウラリット−U(薬効分類:394)            

(2)痛風発作時の治療 
  痛風発作は、ただ単に尿酸が多いから起こるのではなく、尿酸が多くても、尿酸
が結晶化しなければ、直接発作には結びつかない。
 痛風発作時には高尿酸血症治療剤(痛風治療剤)は原則として使わない。何故、
痛風発作時には高尿酸血症治療剤を使わない方がよいかと言えば、発作時に血中の
尿酸値を急激に下げると、発作の重症化、遷延化を起こすことが多く、鎮静化がで
きなくなるからである。尿酸が飽和状態になっている時に、急に尿酸値を低下させ
ると、尿酸の結晶化が増大する。  --出題(6)
 ただ、高尿酸血症治療剤を使っている時に発作が発生した場合には、投与量を変
えないでそのまま投与する。しかし、投与量が多すぎ、尿酸値が低すぎることが確
認された場合には、高尿酸血症治療剤の使用を中止する。
 痛みの始まる直前にその部位に予感を感じることがある。これは人によって違う
が、この前兆期にコルヒチンを服用することで大きな痛風発作が防げる。コルヒチ
ンは痛風発作の前兆期、発作開始直後には優れた効果を発揮する。最初、 1錠を用
い、効果がない場合には 1時間おきに 3回くらいまで使用する。なお、コルヒチン
は発作が起きて時間が経過してから服用しても効果はないので、痛風患者には常に
携帯させ、発作の前兆があればできるだけ早く服用させる。普通、発作の激しい期
間は 2〜3 日位である。  --出題(7)
  また、痛風発作の極期の治療としては、比較的高用量の非ステロイド性抗消炎剤
(ボルタレン、インダシン、ナイキサン など)を用い、発作が治まればすぐに使用を中止するな
ど短期間に限り、副作用に注意して用いる。

(3)痛風発作予防剤:コルヒチン   colchicine
 コルヒチンという名称は、このアルカロイドの原料植物であるイヌサフランの学
名colchicum autumnale に由来する。          
 コルヒチンはビザンチン帝国の時代に「秘伝薬」として上層社会で使われていた
ようであるが、1763年フォン・シュテルク Von Storck が痛風治療に使用し、1860
年頃から一般的に使われている。ベンジャミン・フランクリンもこのイヌサフラン
療法でよくなって、その効果を述べている。
 コルヒチンは 7員環の二つが融合した特異の構造を有している。尿酸排泄促進作
用はない。コルヒチンは痛風発作の前兆期、発作開始直後には優れた効果を発揮す
る。最初、 1錠を用い、効果がない場合には 1時間おきに 3回くらいまで使用する。
それ以上必要な場合には非ステロイド性抗消炎鎮痛剤を併用する。
 コルヒチンは血中尿酸値を下げる作用はないが、発作の局所に集まる白血球を抑
制することによって、炎症を抑制する作用がある。
  なお、コルヒチンは発作が起きて、時間が経過してから服用しても効果はない。
また、痛風以外には鎮痛作用はなく、どうして痛風の痛みに効果があるのかよく解
っていない。コルヒチンには細胞分裂を抑制する作用があるが、毒性が強い( 7mg
を服用して死亡した例もある)ので、そのままでは抗がん剤としては使えない。 
 大量に服用すると、下痢、嘔吐などの消化器症状が約80%に出現する。腹痛が始
まったら、直ちに服用を中止する。強い下痢作用を有するので、整腸剤との併用を
考慮する。
 また、父親がコルヒチンを服用した場合、その配偶者より、ダウン症候群及びそ
の他の先天異常児の出生が報告されているので、注意を要する。
(4)尿酸排泄促進剤 
 尿酸排泄促進剤は、尿酸の排泄を高めることによって、血中の尿酸値を下げる薬
剤であるが、腎障害が高度の場合には効果がないので、合成阻害剤を使わねばなら
ない。尿酸排泄剤は初め少量を使い、血中の尿酸値を測定しながら、2〜4週間ごと
に 1錠ずつ増やし、尿酸値が 4〜6mg/dlになるように必要量を決定する。
  尿酸値が目標に達するまでには、普通 6カ月かかるが、その間に痛風発作がある
ことが多い。
 酸性尿を改善することは、腎で排泄された尿酸を効率よく体外に排泄するために
必要である。尿中の尿酸の溶解度はアルカリになるほど上昇する。つまり、尿が酸
性であれば、尿酸結石が作られやすくなる。
  痛風患者の多くが酸性尿であることから、この酸性尿の是正が必要で、従来はこ
の目的のために、重曹を2.0〜4.0g/日を2〜3回に分けて投与していたが、最近で
はウラリットUが使われる。
  どの治療剤を使う場合でも、尿酸をより多く排泄するために、飲む水の量を多く
し、一日の尿量が1.5〜2.0・となるように心がける。また、尿酸排泄剤を使用して
いる場合は、アスピリン、糖尿病治療剤との併用には注意する。アスピリンは尿酸
排泄剤の作用を弱め、糖尿病治療剤は低血糖発作が生じやすくなる。従って、解熱
鎮痛消炎剤の必要な場合にはアスピリン以外の薬物を使用する。

1.プロベネシド(プロベネミド、ベネシッド)
 プロベネシドはペニシリンが高価な時代に、ペニシリンの尿細管分泌を抑制し、
血中濃度を持続化するために開発された。しかし、ペニシリンが安価になりこの目
的が不要になった現在、プロベネシドは尿酸排泄促進剤として繁用されている。
 1949年から用いられており、現在の尿酸コントロ−ル剤では最も長い歴史をもつ。
尿細管における分泌の前と後の両方で尿酸の再吸収抑制作用を有する。プロベネシ
ドはカルボキシル基を有し、尿酸と同じ有機酸分泌機構によって尿細管分泌される
が、この 2種の酸はこの機構に対し、互いに競合的に作用して、尿酸の尿細管分泌
を抑制する。半減期は 6〜12時間である。
 ペニシリン、インドメタシン、リファンピシン、セファレキシンなどの排泄と競
合するため、投与中の併用剤には注意する。
 少量のアスピリンはプロベネシドの尿酸排泄作用を消失させるため併用できない。

2.スルフィンピラゾン(アンツ-ラン)
 フェニルブタゾン誘導体の尿酸排泄効果を調査中にプロベネシドより強力な化合
物として発見された。痛風患者に対してプロベネシドの約 6倍の効果を示すと言わ
れている。ピラゾロン骨格をもち、代謝産物であるN-ヒドロキシフェニル化合物にも強い尿
酸排泄作用のあることが知られている。主として近位尿細管での尿酸再吸収抑制作
用によるものと考えられている。
 フェニルブタゾンの誘導体で、1965年頃から、尿酸排泄効果が認められて用いら
れている。経口投与で速やかに腸管から吸収され、 1時間で最高血中濃度に達する。
95%はアルブミンと結合する。半減期は短く、 1〜2 時間で、24時間以内に24%が
そのままの形で排泄される。
 投与後の24時間以内での血清尿酸値の低下率は、 400mg投与の場合は30%、尿中
尿酸排泄率は65%増加と、プロベネシドの同量投与と比較して 3〜6 倍の尿酸排泄
効果を示す。しかし、尿酸排泄効果は投与量が少ないと、サリチル酸剤と同じく、
逆に尿酸分泌効果を抑制する欠点がある。
 また、副作用では造血抑制作用、消化管粘膜障害作用が強く、長期的に使用する
尿酸排泄促進剤として問題が多いので、最近ではあまり高尿酸血症治療には用いら
れず、抗血栓剤として適用されることが多い。

3.ベンズブロマロン(ユリノ-ム他)
 1979年からわが国で用いられ、欧州諸国でも広く用いられているが、米国では使
用されていない。尿細管における尿酸の分泌後再吸収を特異的に阻害して、尿酸の
排泄を促進するため、他の薬剤や有機酸類の腎での排泄には影響を及ぼさず、中等
度の腎機能障害例でも血清尿酸値を有効に低下させる。また、単回投与により尿酸
排泄効果が24〜48時間持続(生物学的半減期:12〜13時間)するので、 1日 1回の
投与でも安定した血中濃度が得られる。このような理由で、わが国においてはプロ
ベネシドより多用されている。
 尿酸排泄低下型(尿酸クリアランス/クレアチニンクリアランスが 9%以下)に
対し使用する。尿管結石の既往や腎障害のある場合には使用できない。催奇形作用
が報告されているので、妊婦及び妊娠の可能性のある婦人には投与できない。
  関節炎発作が鎮静化してから使用する。本剤の尿酸排泄作用は強力で、治療開始
時に急激な血清尿酸値の低下とそれに伴う痛風発作を来し増悪することがあるので、
初期投与量は、25mg/日と低めに設定して、少量より開始し、血中と尿中の尿酸値
をチェックしながら、 150mg/日まで増量する。投与開始前の尿酸値の1/2になっ
た時点の投与量を維持量とする。
  尿が酸性の場合、尿管結石を形成しやすくなるため、飲料水を増やし、ウラリッ
ト−Uを3〜6g/日内服させて、尿の pHを 6〜7 にすることが望ましい。この時、
血中電解質及び酸塩基平衡に注意する。また、尿中尿酸濃度が、50mg/dlを超える
と尿管結石を形成しやすくなるため、さらに血中尿酸値を下げる必要がある場合は、
尿酸合成阻害剤を併用する。
 使用中に痛風発作が起きた場合は、減量し、鎮痛消炎剤を併用する。
  副作用としては、尿酸の尿路への大量排泄に伴う尿路結石の形成、軽度の消化器
症状、肝障害、皮疹、浮腫、頭痛などである。催奇形作用がある。

(5)尿酸合成阻害剤:アロプリノ−ル(ザイロリック他) 
 キサンチンオキシダ−ゼにより尿酸に代謝されるヒポキサンチンの同族体で、抗
腫瘍剤の開発中にキサンチンオキシダ−ゼ阻害作用の強い薬物として発見された。
アロプリノ−ル自身がキサンチンオキシダ−ゼの基質となることから、作用機序は
キサンチンオキシダ−ゼに対する競合的阻害作用である。高濃度では非競合的阻害
作用も示す。尿酸合成阻害剤としては、現在アロプリノ−ルのみといってもよいで
あろう。ただ、腎機能の悪い患者に使用すると、体内に蓄積し副作用が多く発現す
る。尿中の尿酸値も低下させるので、尿酸結石のできやすい人に適する。
  使用する基準としては、クレアチニン−クリアランスが、50ml/分以下では、ア
ロプリノ−ル使用量を200mg/日以下、30ml/分以下では、100mg/日以下にする。
半減期 2〜4 時間(但し、活性代謝物:オキシプリノ−ルは28時間)で、作用ピ−
クは 2〜6 時間である。
 原則的には、尿酸合成亢進型(尿中尿酸排泄量が 700mg/日を超える)の高尿酸
血症に対して使用する。このように主たる適応症は、尿酸合成亢進型(過剰産生型)
の痛風であるが、他に尿酸排泄剤でコントロ−ル困難な場合、尿路結石の既往があ
る場合、高度の腎機能低下例、尿中尿酸濃度が50mg/dlを超える場合、白血病など
による続発性痛風、循環器系に重大な合併症のある場合などに適応となる。
  関節炎発作が鎮静化してから使用する。投与初期に痛風発作が一時的に増悪する
ことがあるので、 1日 100mgより開始し(出来れば最初の 1週間は 100mg/日)、
血中と尿中の尿酸値をチェックしながら、200〜300mg/日まで増量する。投与開始
前の尿酸値の1/2を目標に、必要であれば、さらに増量し維持量とする。
 アロプリノ−ルは血漿蛋白と結合せず、抗炎症効果、鎮痛効果もないので、使用
中に痛風発作が起きた場合は、減量し、鎮痛消炎剤を併用する。なお、アザチオプ
リン及びメルカプトプリンの分解抑制作用があるので、併用する場合は、これらの
薬剤を1/3〜1/4に減量する。
  多量投与で、造血器に重篤な障害を来すことがあり、十分注意する。また、投与
を開始してから、数日〜数週間後にまれであるが、発熱、悪寒、頻脈、皮疹が起こ
ることがあるので注意する。

(6)尿酸排泄促進剤+尿酸合成阻害剤
 痛風の治療としては一般に排泄阻害型には尿酸排泄促進剤を、そして合成過剰型
には尿酸合成阻害剤を単独に使用するのが原則である。混合型には排泄促進剤が用
いられてきたが、両剤併用も行われる。
 また、痛風結節が多発しているもの、腎障害、血管障害のあるものには、尿酸排
泄促進剤と尿酸合成阻害剤を少量ずつ併用する。
 尿酸生成過剰型の高尿酸血症に、プロベネシドとアロプリノ−ル(ザイロリックなど)
の併用は、作用機序が拮抗する部分があるので避ける。尿酸排泄促進剤の使用は、
尿中尿酸量を増加させるため、尿量の減少や pHの低下は、尿酸の不溶性を増し、
結晶析出や腎組織(特に髄質間質)への尿酸の沈着を惹起し、尿酸結石や腎障害を
きたす。    --出題(9)
 併用の必要がある場合には、ベンズブロマロン(ユリノ-ム)とアロプリノ−ル を使
用する。この併用ではアロプリノ−ルの代謝産物で、アロプリノ−ルの作用の大部
分を占めるオキシブリノ−ルの排泄が促進される。しかし、これらの薬剤の併用に
よる血清尿酸降下作用は強力なのでそれほど問題にならない。

(7)尿アルカリ化剤:ウラリット−U
 ドイツで尿酸結石の融解剤として、1966年に開発された。クエン酸カリウムとク
エン酸ナトリウムの合剤である。・P.6参照
  尿のpHが 5.5以下の酸性尿のときには尿酸は過飽和の状態になり、尿酸結石など
を誘発する。このような理由で、尿をアルカリ側にすべきであるが、アルカリが強
すぎるとリン酸塩が析出し、細菌も繁殖しやすくなるので、尿のpHは6.0〜7.0位に
するのがよい。特に尿酸排泄剤の場合、この配慮が必要である。


7.痛風治療剤とド−ピング
・・・・・・・・・・・・・・                                                    

 近年、ド−ピング検査機器などの発達により、薬物検出感度が向上してきた。そ
れに伴って、ド−ピング禁止薬物リストに挙げられている興奮剤のカフェインが、
日常の紅茶、コ−ヒ−、ココア、一般のかぜ薬、栄養ドリンク剤を服用していても
検出されてしまうなど問題化されている。そのためスポ−ツ選手が検査の前の日常
生活全般にわたり、非常に神経を使っているのが現実である。  
  痛風治療剤はド−ピング禁止薬物リストには含まれていない。しかし、日本水泳
連盟において、各種競技に参加する選手に使用している薬物の調査票には痛風治療
剤の記載があり、注意を促している。これは、痛風治療剤がド−ピング検査におい
て、検査結果をごまかすことがあるためとされている。    --出題(10)
 痛風治療剤の相互作用・臨床検査値に比較的影響を及ぼす薬物は、アロプリノ−
ル、スルフィンピラゾン、プロベネシドであり、あまり影響を及ぼさないものは、
コルヒチン及びベンズブロマロンである。
 ド−ピング禁止薬物はあくまでも治療目的に使用されている薬物は制限していな
いことから、痛風治療剤を使用しているスポ−ツ選手はド−ピング検査の前に、現
在使用している薬物の報告は必要である。

〔文献〕
    本田・板倉:プリン代謝とその調節,Pharma Medica Vol.11 No.8,19-24,1993.
    松浦・西岡:痛風,臨床と薬物治療,Vol.12 No.1,97-101,1993.
    藤森  新:痛風の成因,内科,Vol.69 No.6,1431-1440,1992.
    松本美富士:痛風発作の治療,Pharma Medica Vol.11 No.8,71-76,1993.
    松井 宣夫:痛風の治療,日本医師会雑誌 Vol.111 No.5,696-701,1994.
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        83,1993.
    加賀美年秀:痛風,臨床成人病 Vol.25 No.11,1586-1587,1995.
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    山岡  孝:medicina Vol.32 No.12,380-382,1995. 
    中西・鎌谷:痛風,medicina Vol.32 No.13,2507-2509,1995. 
    蓮沼・西岡:痛風,からだの科学 No.185,8-12,1995.
    今井 史彦:痛風,診断と治療 Vol.83 Suppl.,259-261,1995.
  山内 俊一:痛風,治療 Vol.77 No.3,77-80,1995.
    北村 正樹:痛風治療剤とド−ピング,治療学 Vol.28 No.11,125-127,1994.


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