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小児のきかんしぜんそく
飯蔵洋治
国立小児病院アレルギー科医長
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★ ぜんそくの特徴
ぜんそくの小どもをもつお母さんは、たいへん病気に詳しい反面、ともすると基礎的
知識があいまいで、誤解してしまうこともしばしばあります。
そこで、ぜひ考えていただきたいことは、自分の小どもはある特定の原因だけで発作
がおこるなどとは思わず、ぜんそく児は気管支が敏感なのだということを理解していた
だきたいと思います。
★ ぜんそく発作のひきがね(気道の過敏性)
小児ぜんそくは、アレルギー素因のある子どもが、ほこりなどの影響を受けて病気が
つくられてくると一般的に考えられていますが、二度目からの発作は、いろいろな因子
で誘発されておこるのです。
このいろいろな因子で発作がおこることは、気道が過敏だからといえるのです。です
から、ぜんそく児の発作が何か一つの原因でおこると思い込み、そのことばかりに気を
配ることは問題があります。いろいろな面に気を配る必要があるのです。
このことは、あまり神経質になりすぎてもダメで、常識的な気の配りかたと、発作が
おこった時の状況をメモして、同じようなパターンで発作がおこる場合は、早期に予防
対策を医師と相談するように努めて下さい。早く自分の子供の特徴をつかむことで、半
ばぜんそく対策は成功と思い、あとは気道が過敏な子どもと、いかに毎日を楽しく過ご
すかを考えてはいかがでしょう。
★ 運動でおこるぜんそく発作(運動誘発性ぜんそく)
ぜんそくの子どもが走ったあと発作になることがあります。
一般には、運動後5分くらいにもっとも苦しくなりますが興味あることは、自然にこ
れが治まってくることです。また、運動は、どの運動でも同じ様な反応を示すのでなく
2分以内の運動では運動誘発性ぜんそくはおこらず、むしろ肺機能の改善がみられるこ
とがありますし、水泳では、普通に泳いでいれば発作がおこりにくいとされています。
学校での体育がいちばん問題になりますが、ポイントは『なんでもやらせるが、患者が
少しでも苦しいと感じた時点で運動を中止させ、5分から10分休ませてから、再度運
動をさせること』といえます。
★ 家庭で発作がおこったらまず何をするか
ぜんそく児に発作がおこったからといって、すぐ病院にくることはどうかと思います
来院前にぜひやって頂きたいことは、家庭での対策で、これを実行するだけで発作が軽
くなることがよくあります。
<家庭で出来るぜんそく発作への対応>
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| 1.飲水(氷水でもよい)氷をしゃぶる
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| 2.腹式呼吸
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| 3.窓を開ける
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| 4.軽い体操、散歩
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| 5.紅茶(冷たい)をのむ
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| 6.首、特に耳の下をアイスノンで冷やす
|
| 7.発作止め(気管支拡張剤)服用
|
| 8.ドライブ
|
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表の1と2は説明するまでのことはありませんね。3は、締め切った部屋では”ほこ
り”などの抗原が充満していることもあり、新鮮な空気と入れ換える意味があります。
4は、上半身を動かすだけでもタンのきれがてよくなることがあるため、そして、5は
ふだんは紅茶を飲ませず冷蔵庫で冷やしておき、発作時に飲ませるのです。
以上のこ
とを実行しても発作が治らないときは、アイスノンのような冷たいもので頸動脈のとこ
ろを冷やします。ただし、この時は素手で持てるような冷たさのものでしてください。
それでも楽にならないときは、発作止めを服用して1時間ほど経過を見てはいかが
でしょうか。そして、どうしても治らずにひどくなる時は、ドライブ(自転車、オート
バイも可)に連れていってください。このような方法で発作が軽くなったり、治まるこ
とがよくあります。
★ からだをきたえる(鍛錬療法)
ぜんそく治療の第一歩は、患児が自分で乾布マサツ、水かぶり、ジョギング、剣道、
水泳などを、毎日あるいは決められた日に、規則正しく行うこと、すなわち鍛錬療法で
あるといえましょう。
このような鍛錬療法を毎日、あるいは定期的に実行できるぜんそく児はみこみがある
証拠です。たとえ発作がおきても、明るくのりきっていける子どもになってきます。最
近はクスリさえのめば治ると思っている親子がたいへんあえていますが、クスリは草花
に与える肥料のようなもので、与え過ぎれば草花は枯れてしまうことを忘れないで下さ
い。
★ 家から”ほこり”を追放しましょう
ぜんそくの発作は夜間におこることが多いことは、もうすでにみなさんよくご存じの
ことと思います。
それはなぜかと考えてみますと、どうも家の中の”ほこり”い問題があるようです。
家の”ほこり”の中でもとくに問題になるのは、ヤケヒョウダニ、コナヒョウダニとい
ったもので、実際に顕微鏡で数を数えてみますと、驚くほどたくさんいることがわかり
ます。たとえばじゅうたん床の家のほこり0.5gと、板床の家のほこり0.5gとで
ダニ野数を比較すると前者は約800匹、後者は約30匹で、じゅうたんを敷いた床が
いかにダニの生息に適しているかがわかります。また、湿度が高いとどんどん繁殖しま
すから、6月から7月の梅雨時にはとくに気おつけてほしいものです。また、布製のソ
ファーも、ダニの巣と考えてよいほどダニがいます。私達の研究結果では、1つのソフ
ァーに平均3000匹ものダニがいることがわかりました。ソファーのダニ駆除はたい
へんですから、アレルギーで悩む人は布製ソファーの使用はやめることをおすすめしま
す。
つぎに問題になるのは、家の中で小鳥、犬、ネコなどを飼わないことです。こういっ
たペットの毛や羽毛そのものがアレルギーに悪いこともありますし、フケ、フンのかす
などがダニのエサになるからです。
★ お母さんにお願いしたいこと
「小児のぜんそくは保護者である親、とくに母親を無視して治療は成り立たぬ」と、
われわれ医療関係者は常に考えています。すなわち、お母さんの理解度が問題になるわ
けです。よく、ぜんそく児のお母さんが悪いと、一方的に決めつける医師がいますが、
私は、ぜんそく児のお母さんは大変だと同情しています。私がお母さんに望むことは、
次のことをのぞいてほかにありません。
お母さんは、母親であり、時にはナース・医師の立場の事までやらなければならない
ときがあります。それをこなすには、たえず常識的に考え、発作状況を正確に覚え、親
は子供と主治医の橋渡しであることを自覚し、感情を抑えてふるまってください。これ
こそが、すべてをうまく明るくしていくことになるのです。
平成7年5月12日
■≪末次氏ら アスピリン喘息へのNSAIDs使用で警告》 アスピリン
喘息患者の場合、すべての酸性非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使
用で致死的な大発作が生じる危険性があることを、医師など医療側は十分注意
する必要があると、藤田保健衛生大学医学部呼吸器アレルギー内科の末次懃教
授のグループが2日、名古屋で開かれた日本胸部疾患学会のシンポジウムで指
摘し注意を喚起した。同シンポでは同教室の榊原博樹助教授らが、NSAID
sの使用で重篤な発作に見舞われた喘息患者の症例を調べた大阪府豊中市の西
沢クリニックの調査を紹介したが、それによるとこの種の大発作が起きた患者
のうち、一般薬局からNSAIDsを購入した患者群が43.6%と最も多く、次
いで整形外科・脳外科などからNSAIDsを処方された喘息患者が16.2%で
あるのに対して、内科は5%と少なく、産婦人科、整形外科、歯科などの医療
側の認識不足が目立つと指摘した。さらにそのような致死的な大発作が1回だ
けの人は55%だったが、複数回起きた人が45%もいた。致死的な大発作は、ア
スピリン喘息患者の24.3%に起きており、さらに喘息患者の突然死の41.1%は
アスピリン喘息患者であった。
一方、アスピリン喘息は初診時に正しく診断し適切に管理すれば意外に軽症
化に向かうことも判明しており、末次教授は「アスピリン喘息は確実な診断と
適切な対策が大切であり、致死的な大発作を回避する意味からも、“アスピリ
ン喘息”を病型の一つに加えるべきだ」との認識を示した。また喘息患者のカ
ルテには、 (1)「アトピー性か非アトピー性か」
(2)「アスピリン喘息か非ア
スピリン喘息か」ーの2つの分類を記載するべきであると提案した。アスピリ
ン喘息とは、アスピリンがひき金となって生じる喘息のことである。
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