初乳に感染防ぐ物質 C型肝炎ウイルス 国内の研究グループ発見|
ラクトフェリンとは 感染防御や免疫力増強の働きのある蛋白質
『初乳』の免疫力の主役 母乳に豊富、初乳にはさらに倍以上
鉄不足のとき吸収を促進 鉄を運ぶもの(フェリン)の名前を持つ
きわめて安全 母乳や牛乳で実証されている
特徴 ラクトフェリンは鉄イオンと結合すると赤色になる蛋白質です。哺乳動物の乳や涙、唾液、胆汁などの分泌物の中に存在し、特にヒトの母乳には1Lあたり2〜4g、初乳には5〜10gも含まれており、牛乳の約10倍になっています。また、体の細胞内でも作られ、さまざまな働きをしています。
形態 分子量は8万。約700個のアミノ酸が鎖になっています。柄のないイチョウの葉が2枚ついたような構造で、2個の鉄イオンが結合できるようになっています。
ラクトフェリンの生理作用
抗菌作用 ヘリコバクター・ピロリ菌 病原性大腸菌 サルモネラ菌など
(胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因菌の除去、食中毒の予防)
整腸作用 ビフィズス菌の増殖 腸内細菌叢を整える
鉄吸収調整作用 鉄欠乏性貧血の改善・予防(必要とする場合だけ吸収を促進)
酸化抑制作用 活性酸素の生成調節 鉄イオンによるラジカル生成を抑制
免疫機能調整作用 ナチュラルキラー活性を高める、マクロファージの貧食作
用を促進
T.有害な細菌に対する抗菌作用 (胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因菌の除去、胃癌、食中 毒の予防)
U.腸内細菌叢を整える整腸作用 (下痢など)
V.鉄の吸収を調整する作用 (鉄欠乏性貧血)
W.活性酸素などによる酸化を抑制する作用 (活性酸素が原因となる老化、ガン、生活習慣病の予防)
X.免疫機能を調節する作用 (感染症)
その他の作用 消化管粘膜上皮細胞などの増殖促進作用
T.有害な細菌に対する抗菌作用
U.腸内細菌叢を整える整腸作用
V.鉄の吸収を調整する作用
(ラクトフェリンを用いれば少量の鉄でも効率良く吸収でき貧血改善のための無機鉄の過剰摂取による下痢、嘔吐、胃炎などの副作用を引き起こすことがない)
(生体が鉄を必要としない場合は鉄吸収率を上げない)
(小腸刷子縁膜のラクトフェリンレセプターは鉄結合型ラクトフェリンと優先的に結合し、鉄欠乏状態になるとレセプターの数が増加する)
(ラクトフェリン1分子で70分子以上の鉄を可溶化できる)
具体例 貧血ラットに鉄を経口投与
⇒そのままではヘモグロビン量の改善はみられなかったが
ラクトフェリンとともに投与すると1〜2ヶ月で正常ラ
ットと同じレベルにまで回復
W.活性酸素などによる酸化を抑制する作用
活性酸素、過酸化脂質の生成を抑制
(‘OH)の生成を調節する
(周囲の正常細胞や免疫細胞が障害を受けないように)
(炎症部位で赤血球から放出される鉄、マクロファージの食作用で破壊された細菌由来の鉄を捕足してハイドロキシルラジカルの生成を抑制する)
(不飽和脂質の過酸化を促進する鉄イオンを捕足することによって過酸化を抑制する)
具体例 卵黄リン脂質リポソームに硫酸鉄アンモニウムとアスコルビン酸を添加すると著しい脂質過酸化がおこる
⇒ラクトフェリンを加えることにより脂質の過酸化はほぼ完全に抑制される
X.免疫機能を調節する作用
(単球・マクロファージ及びリンパ球にはラクトフェリンレセプターがあり、ラクトフェリンがこれらの免疫担当細胞に結合してサイトカイン分泌の調節、増殖・分化の制御、ナチュラルキラー細胞の活性化に寄与)
具体例 マウスに致死量のサイトメガロウィルスを感染
⇒あらかじめラクトフェリンを投与しておいたマウスでは
感染死が予防される
マウスの腹腔内に病原性大腸菌を投与
⇒感染4日〜3時間前にラクトフェリンを投与すると死亡率が低下、 1時間前では効果がないことからラクトフェリンがナチュラルキラー(NK)細胞を活性化していることを示唆
好中球の欠陥が原因となっているラクトフェリン欠損症患者
⇒繰り返し感染症にかかる
ラクトフェリンと結合する細菌
大腸菌、インフルエンザ菌、百日咳菌、歯周病菌、パラ百日咳菌、虫歯菌、黄色ブドウ
球菌、コレラ菌、アエロモナス菌、レジオネラ菌、淋病菌
具体例
〇病原性大腸菌とヒト小腸細胞を混合
⇒ ラクトフェリンが細胞への大腸菌の付着を阻止
〇マウスにラクトフェリンを与えた後、病原性大腸菌を経口感染
⇒ 十二指腸、空腸、回腸への大腸菌の付着を阻止
〇病原性大腸菌やサルモネラ菌などが産生する細菌毒素
⇒ ラクトフェリンが細菌毒素の毒性を減弱
〇連鎖球菌、コレラ菌
⇒ ラクトフェリンが抗菌作用で死滅させる
〇無菌マウスの胃内に定着させたヒトのヘリコバクター・ピロリ菌
⇒ ラクトフェリンが増殖を抑制
〇育児用調製粉乳のラクトフェリン
⇒ ビフィズス菌優勢の腸内細菌叢に変化
〇無菌マウスにヒトの腸内細菌叢を定着
⇒ ラクトフェリン添加飼料により腸内細菌叢の悪玉菌が減少し、善玉菌であるビフィズス菌が優勢
初乳に感染防ぐ物質 C型肝炎ウイルス 国内の研究グループ発見
人間や牛が出産直後に最初に出す初乳に多く含まれるラクトフェリンというたんぱく質に、 C型肝炎ウイルス(HCV)が肝臓細胞に感染するのを防ぐ働きのあることが、国立がんセンター研究所の池田正徳博士らと横浜市大医学部の共同研究で分かった。6月25日からアタリアで開かれるHCV国際会議で発表する。培養細胞での実験だが、ラクトフェリンは副作用の報告がないため、研究グループはHCV感染者に経口投与する臨床試験を計画している。ラクフェリンは、殺菌やエイズウイルスの細胞感染巣阻害、大腸がんの予防などの効果があるとされ、一部の乳製品にも添加されている。がんセンター研究所分子遺伝子学研室の加藤宣之室長によると、HCVに牛から抽出したラクトフェリンを加えた後、肝臓の培養細胞に混ぜたところ、細胞へのHCV感染が完全に押さえられた。また、HCVのうち、C型肝炎治療薬インターフェロンの効きにくい1B型の感染も防いだ。加藤室長らは、HCVの表面たんぱく質にラクトフェリンが結合することで、感染できなくなるとみている。
研究グループの田中克明・横浜市大教授は、「感染者の体内のウイルス量を減らし肝機能を改善できるかもしれない」としている。
C型肝炎ウイルス
牛乳成分が感染防止 国立がんセンター報告
国立がんセンター研究所と京都大学ウイルス研究所は共同で、母乳や牛乳に含まれるラクトフェルンと呼ばれる成分にC型肝炎ウイルスの感染を防ぐ働きがあることを発見した。ウイルスとラクトフェリンを混ぜて培養細胞に添加したところ、細胞はウイルスに感染しなかった。C型肝炎では、代表的な抗ウイルス剤であるインターフェロン以外に有効な治療がなく、新しな予防、治療薬に使える可能性がある。研究チームはあらかじめ牛のラクトフェリンを加えておいたウイルスを肝臓の培養細胞に添加し、 8日後に感染の有無を調べた。その結果、細胞からウイルスの本体であるリボ核酸(RNA)は検出されず感染していないことがわかった。
1999年(平成11年)3月7日 日曜日
C型肝炎 牛乳の成分効果
がんセンター臨床試験
国内に約 200万人の感染者がいるとされるC型肝炎の新しい治療法として、牛乳に含まれるたんぱく質「ラクトフェリン」を患者に食べてもらう臨床試験が、今月から国立がんセンターではじまった。横浜市立大医学部でも同様の試験の計画を進めている。培養細胞を使って実験ではC型肝炎ウイルスの増殖抑制効果がわかっている。ラクトフェリンは人や牛などの母乳に含まれ、これまでに大腸がん予防効果などが判明している。国立がんセンター研究所ウイルス部の加藤宣之室長らが人の肝臓の細胞を使って実験したところ、ラクトフェリンを加えるとC型肝炎ウイルスが細胞に感染しにくくなった。加藤室長はウイルスの表面にラクトフェリンが結合することで増殖が抑えられたとみている。
国立がんセンター中央病院では、倫理審査委員会の承認を経て、内科の岡田周市医長らが今月から臨床試験をはじめた。C型肝炎患者に牛乳から作ったラクトフェリンを 8週間食べてもらう。どのくらいの量を食べれば効くか調べるため、患者45人を一日1.8グラム3.6グラム7.2グラムの三群に分けて効果をみる。臨床試験で使うラクトフェリン食品は森永乳業が作った。ラクトフェリンを牛乳から精製する技術を同社が開発し、食べやすい錠剤型の食品にした。横浜市立大医学部第三内科の田中克明・助教授らも学内の倫理委の承認が得られれば、同様の臨床試験を始める予定だ。現在、C型肝炎患者の治療には、インターフェロン注射が使われていれが、一部の患者には効かないなど」限界も指摘されている。田中助教授は「ラクトフェリンは牛乳に含まれる食品なので副作用はほとんどないと考えられる。効果がはっきりすればインターフェロンに次ぐ選択肢になるのではないか」
とみている。
「C型肝炎の感染を防ぐ」
赤ちゃんが、お母さんの母乳を飲むことは、スキンシップにいいだけではありません。栄養的にも、非常にたいせつな意味を持つ行為なにです。生まれたばかりの赤ちゃんは、菌に弱く、病気にかかりやすいのですが、お母さんの出産直後の「初乳」を飲むことだ、細菌やウイルスに対しる抵抗力をつけるのです。この「初乳」に含まれ、体を守る働きをするにが、【ラクトフェリン】という成分です。ラクトフェリンとはタンパク質の1種で、出産後3日ほどの母乳である「初乳」に多く含まれています。ラクトフェリンの働きは、
など、じつに多彩なものです。
近年、このラクトフェリンの働きのなかでも、特に注目を集めているのが、C型肝炎ウイルスの細菌感染を防ぐ効果です。残念なことに、現代の医学では、C型肝炎ウイルスに対する決定的な治療法がありません。C型肝炎の治療法としては、インターフェロンが有名ですが40〜50%しか除菌できないこと、重い副作用があることなどから、治療法の決定打とはいえないのが現状なのです。しかし、C型肝炎が進行して慢性肝炎になると、肝硬変から肝臓ガンへ移行する危険があるため、見過ごすわけにはいきません。国立がんセンターの実験では、ラクトフェリンがC型肝炎ウイルスにくっついて細胞に感染するのを防ぐことが確認されています。そのため、今後、ラクトフェリンが、薬として利用できる可能性も期待されているのです。
「血管の老化を防ぐ力もある」
さらに、注目されているのが、ラクトフェリンが活性酸素の害を防ぐ効果です。「人間は血管とともに老いる」といわれ、だれしも年をとると血管の動脈にコレステロールがこびりついて、血管の内側が狭くなる「動脈硬化」が起ってきます。このとき、高血圧や糖尿病などの病気があると、血管の障害がどんどん進んでボロボロになり、脳卒中や心筋梗塞を引き起こす原因となるのです。そこでたいせつなのが、活性酸素の害を防ぎ、血管の若々しさを維持すること。ラクトフェリンは活性酸素の害を防ぎ、血管の若さを保つために大いに役立ちます。そのため、高血圧や糖尿病の人でも、血管の老化を進めないため、とるといいでしょう。健康のため、ラクトフェリンをとる目安は、1日300mg程度。ラクトフェリンは、初乳以外の通常の食品では、牛乳に比較的多く含まれます。しかし、この量を牛乳でとろうとすると、10リットル以上もの量を飲まなければいけません。牛乳からラクトフェリンを抽出した便利な食品もありますので、そのようなものを利用してもいいでしょう。
ピロリ菌にも効くラクトフェリン
胃潰瘍や十二指腸潰瘍を起こす原因なる、ヘリコバクター・ピロリ(以下、ピロリ菌と略す)という細菌。最近、注目されているのが、ラクトフェリンのピロリ菌を除去する効果です。胃潰瘍や十二指腸潰瘍は、ピロリ菌があるとたいへん再発しやすいのですが、ラクトフェリンはピロリ菌を除去して予防や再発防止に役立つのです。